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境目@変態EX
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まほうのうつわ

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食器棚から久々にフェリシアーノを取り出して、アーサーは初めてフェリシアーノを見た時のように両手のひらでぎゅっと温める。嬉しそうな声をあげて、フェリシアーノが笑った。
「アーサー。俺、考えたんだけど」
「なにを?」
「うん、俺ね、もうすぐ壊れちゃうの」
ほらみて、フェリシアーノが下を向くので、アーサーはフェリシアーノの脚をみた。細かなひびがキラキラと輝いて、それは絨毯の上に小さな欠片となって散っていく。驚いたアーサーが急いでキッチンに向かう。確かキッチンの冷蔵庫の上には、なんでもくっつく接着剤があったはずだ。
その間にも、フェリシアーノの身体は下の方からキラキラ光って砕けていく。
「俺ずっと考えてたんだ、アーサーの涙をどうして一粒しか受け止められないんだろうって」
「うん」
「俺が出来そこないの器だからなんだろうなって思ったんだよ。だからね、俺は壊れちゃうから、今度はアーサーの涙をいっぱい受け止めてあげられるようになろうって」
楽しそうに言うフェリシアーノは、もうアーサーが持つ部分の下がすべて粉となってキッチンのテーブルの上に音もなく落ちた。
「俺が粉々になっても、アーサーは捨てないでいてくれる?」
「捨てたりなんかしないさ。それより待ってくれ、接着剤をさがすから」
「アーサー」
フェリシアーノが、両手を揃えて差し出した。
「アーサーの涙を一粒受け止めるよ、ちょうだい」
アーサーはその両手に、今までそうしてきたように顔をうずめた。ぷっくりと幕を張ったように丸い涙が、フェリシアーノの両手を満たす。大事そうにかかえて、フェリシアーノはその涙をごくごくと飲み干した。
「今までに飲んだことがない味がするよ、アーサー」
「おいしいか?」
「うんとても、せつなくてうれしい。ありがとうアーサー」
フェリシアーノが笑って、そして全て粉々になった。
キッチンテーブルに溜まった欠片は、ひとつひとつが星の形をした大粒の白い砂になっている。アーサーはフェリシアーノの欠片を、ジャムを入れるためにとっておいた小瓶に残らず移し替えた。その間にアーサーの涙がフェリシアーノの欠片にぽたぽたといくつも沁みこんでいったけれど、フェリシアーノの欠片は、アーサーの涙を全て飲み干してしまった。
「今日からよろしくな、砂のフェリシアーノ」
作品名:まほうのうつわ 作家名:境目@変態EX