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夜船

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 聞き覚えの無い単語に首を傾げ、すぐに目の前の物と納得する。聞いた事の無い呼び名であるが、由来があるのだろう。
 一緒に載せられた箸を手に取り皿を持ち上げる。検分するまでもなくこしあんだ。どちらも好物に当たる為気にはならない。
 一口放り込めば、控えめの甘さが口に広がった。塩みが若干強い気がするが、それくらいだろうか。こしあんが舌の上で溶ける。
「ふむ。美味ではないか」
「そいつぁ良かった。あんたこういうの好きだと思ってさ」
「虎の若子ほどではないがな」
 幸村の名前を出して見れば、そいつぁ違いねぇと笑われた。あの男が甘味を食べている光景は元就ですら曖気が出そうになる程だ。忍が渋い顔をするのも頷ける。
「しかし……塩が多すぎるのではないか?甘味を引き立たせる以上に自己主張しておる」
「あー、入れすぎたかな。まぁその辺は直していくさ」
 言葉に引っかかりを覚え眉間に皺を寄せる。
「何かに使う物か」
「おう。あと一月先……入梅あけだな、にちぃっと使う用事があんだよ」
「夜船、か?」
「気付いたか?なんだ勘強ぇな」
 簡単な事、と息を吐いた。それがぼた餅の通称であるなら、多少頭を捻れば答えは出てくる筈だ。
「で、どこに攻め入るつもりだ」
「さぁて、何処かねぇ。若しかしたらあんたンとこかもしれないぜ?」
 戯れ言を、と切って捨て、もくもくとぼた餅を口に入れては咀嚼していく。元親はと言えば、自分では食べる気がしないのか、一人湯飲みを傾けるだけである。
 夜襲とはまた、縁の無さそうな顔をしてえげつない。常道とはいえ、その様な統率が取れて居るとも思えない。
 ならばまた別な意味でもあるのだろうか。
 暫く外を眺めしらばっくれていた男が振り向き、目を細めた。
 何故、と目を眇め見返せば、名を呼ばれ顔を上げろと手で示す。大人しく従ってやると元親の指先が頬に触れた。唐突に触れられ、くすぐったいと示したが構わない様子だ。
「長曾我部、貴様何のつもりぞ……っ!」
 苛立ち、凄んで見せても何処吹く風と頬を撫で下ろし、指先が口の端に触れる。拭い取る要領で元親が離れ指先を目の前に突きつけられた。
「ほれ、餡子付けたままなんて格好つかねーだろが」
 言って屈託も無く笑う男は矢張り理解不能だ。そう思いしみじみと溜息を吐いた。
作品名:夜船 作家名:nkn