意地っ張りに恋したお題
09.何度でもこうして、ほら
「ほら、言っただろう? ヒーローは必ず名誉を挽回するんだぞ」
「………確かに、先週そんな話はしたけど、なぁ……」
「どうだい? もう電話の向こうで泣くようなことはないかい?」
「だから、そもそもあの時も泣いてねぇって言ってるだろーが!」
「あぁ、風邪引いてたんだっけ、そういえば」
「そうだ、風邪だ風邪。風邪だからな」
「まぁなんでもいいさ。それよりイギリス、どうだい?」
「なにがだよ」
「今日の電話は満足したかい?」
「……満足っつーか……。誰が、一日に3回も4回もかけてこいって言った」
「キミが寂しくて泣いてるかと思って、今日は特別なんだぞ」
「お前、時差考えろ時差! いまこっちは真夜中なんだよ!」
「ははは、夢の中まで救いにいけたかい?」
「っ、お前なぁ……」
「ほら、こうして何度でも助けに行けば、信じてくれるだろう?」
「あぁ?」
「俺がキミのヒーローだってことがさ」
「……あ、あぁ」
「ヒーローはさ、一回だけ助けてもヒーローじゃないんだ。毎回ピンチの時に必ずやってきてくれるから、ヒーローなんだぞ。
そうしたら、ピンチの時だって必ずヒーローが助けにくるってわかっているから、怖くなくなるだろう?」
「……っ……」
「だから、もう絶対、寂しいことなんてないんだぞ。必ず俺が行くから安心して、泣かないで、イギリス」
「………お前、は……」
「んっ? なんだい、今度は嬉し泣きかい? ははは、そうそう、ヒーローの前の涙はそうでなきゃ」
「誰が、だ! 泣いてねぇよ、ばか!」
作品名:意地っ張りに恋したお題 作家名:せらきよ