幽霊アパート。
7歩程で部屋の隅から隅までを網羅出来る――良く言ってアットホームな、事実を口にしても構わないなら兎小屋のような――そんな部屋が、俺の居場所。
ここにしか留まる事が出来ない俺は、今度は別の事を願う事にした。
「シズちゃん、ほら、朝だよー」
「んぁ…?んだ、臨也か…」
「じゃなくて、もう11時ですよー」
「…っ!マジか?!」
「ううん、まだ8時」
「っ、だよ…騙すなよ!」
「だってそうしないとシズちゃん起きないんだもーん」
「良い歳した男が、だもん、とか使うな」
「あっ!シズちゃんそれ差別だよ。性差別!キャー!シズちゃんにセクハラされちゃったぁ~~!」
「ああああ、うっぜぇ!!!」
この部屋の主が、変わらない事を。
今の俺は、ただ、祈っている。
幽霊アパート。/end