innocent world
土方 …こっちへ、こいよ。
高杉 (ふっと笑む。柔らかい表情)あぁ。
(土方の隣に座り、土方を自分の方へ引き寄せ、頭を撫でる。土方はされるがまま)
土方 もう、日が暮れてきたな。
高杉 あぁ。
土方 なぁ、晋助。どうしても旅に出なけりゃいけないのか?
高杉 いや、もう出なくていい。ここにずっといろ。死ぬまでなァ。
土方 そうなのか?(ホッとして)…よかった。
なぁ。
高杉 なんだ?
土方 さっきの奴、だれだ。
高杉 誰か来たか?
土方 あぁ、来たじゃないか。
高杉 そうか?
土方 確かに来たぞ。俺ァ、あんなに大きな声でわめきたてる奴、嫌ぇだ。
高杉 そうだな。俺も嫌ェだ。
土方 (扇を持て遊びつつ)明日も、待つんだな。待って待って…そうして日が暮れる。
高杉 俺ァ待たねェ。もう、てめェが傍にいるからなァ。俺ァそれだけで、いい。
土方 …俺ァ待つ。
高杉 俺ァ 待たねェ。
…待って待って…。ずっとここにいろや。
土方 …あぁ、そのつもりだ。
(土方の大きな瞳が高杉を捉える。高杉の瞳が土方を捉え、顔を寄せる。
……高杉の唇が土方の唇へ触れるまで、あと、わずか)
高杉 …愛してる。十四郎。(唇を合わせる)
土方 (ふぅわりと笑む)
……………あぁ。
了
作品名:innocent world 作家名:森永 マミィ