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森永 マミィ
森永 マミィ
novelistID. 10853
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innocent world

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土方 …とにかく絶対ェここから離れねェから!(自分の部屋へと走り去る)
高杉 …ったく。(紙片を集め掃き捨てようとするところへ戸口に立つ男に気付く)


   第 参 場 ( 近藤 ・ 高杉 )

高杉 (もうわかってはいるが)てめェ……。誰だ。
近藤 トシは、いや、土方くん、いますか?
高杉 (身構えて)そういう奴ァ家にはいねェが。
近藤 いや、いる筈です。(新聞を出し)今朝の新聞で読みました。
高杉 新聞がでっち上げたんじゃねぇのかァ?
近藤 (どんどん入ってくる)土方くんに会わせてください!!
高杉 てめェ、人んちに勝手に入ってくるなんざァ、いい度胸だなァ。しかも元攘夷派テロリストの俺の家にだぜェ。
  …殺されてェか!(瞳孔が開ききり狂気に満ちた眼を近藤へ向ける)
近藤 …近藤と言ってくれればわかる筈です。
高杉 ………。
近藤 疑っているなら、ここに扇がある。トシの梅の花を描いた扇が。
  とにかく土方くんに会わせてください!
高杉 新聞を見て急に駆けつけてきた不誠実な奴なんぞ、会わせるつもりはねぇよ。ずっと、三年も放っておいたくせによォ。
近藤 その点については、申し訳なかったと思っています。しかし、一年前、ようやく道場再興の目途がついたので彼を迎えに町へ行ったところが,すでに彼は去ったあとでした。
  その後何度も捜したのですが…。
  人の噂では、真選組が解散となり、バラバラになってのち、それまで心血を注いできたものを失ってしまったトシ、いや、土方くんが自分を失ってしまい、誰かに引き取られたというのを聞きました。
  そんなことになってしまうなら、苦労をかけることにはなっただろうが、一緒に連れていけばよかった…、と悔やんでいます。
高杉 十四郎は、てめェと離れたあと、新政府となってからも、ことあるごとに用事を任されていた。十四郎はあの容姿だ。新政府からぜひにと請われ、毎夜接待を押し付けられてた。それでも、てめェがいつか迎えにくるって思ってそれだけを頼りにがんばってた。だが、しかし、新政府にいいように扱われる毎日、日毎に痩せ細っていった。
  俺が十四郎と再び出会ったのもその接待の席だった。真選組のころからあいつのことは気になってたが、その時の十四郎はその頃の見る影もないほど、すっかりやせほそり儚げになってた。それを黙って捨て置けず俺の家へ引き取ったっていう訳さ。それが今から二年ほど前になるか…。
近藤 それじゃあ二年もあなたのお世話になったんですね。
高杉 てめェの所有物のような言い方はやめろや。
近藤 そうして、土方くんを俺に会わせない…。高杉さんは土方くんの幸せを願ってはいないんですか?
高杉 あぁ、俺は俺の幸せを大切にする。
近藤 それじゃトシの幸せはどうなるんだ!
高杉 俺ァ松陽先生を喪ってから、何もなくなった。すべて失った。先生を殺したこの世界、自分の手ですべて壊してやるつもりだった。こんな腐った世界なんぞいらないと思ってた。
   …それなのに…、あいつと出会っちまった。
  奴ァ俺を取り締まる側で、俺ァ追われる側で。まったく相容れねぇ逆の立場として。
  だがそんなこと、俺にとっちゃ、全く問題ねェ。生まれて初めてだった。あんなにほしい、手に入れたいと思ったものは。それが、…十四郎だ。
あいつを見たときから、たぶん、落ちていた。俺の中に在ると思ってもいなかった感情の中へ。あいつは全く与り知らぬことだけどなァ。(ふと遠い目をして皮肉気に笑む)
  
   それから…。あいつへの思いを認めてからだが…あいつを手に入れるためどんな手も使った。…ただ、十四郎と二人きりの世界を創っていくためになァ…。(煙管を懐から取り出し一吸肺に入れてから、にやり、と笑む)
  ここまでくるのにどんなことも厭わなかったしこの十四郎との暮らしは何ものにも替え難いものでなァ。
  やっと手に入れたこの二人の生活を手放す気は毛頭ないぜ。…てめェを此処で殺してでもなァ!!(煙管を傍に置きすらりと刀を取り出し近藤へと向ける。)
近藤 (全く動じず)俺がこの場で殺されたらきっとトシはあなたを許しはしないでしょうね!
   (じっと両者睨みあう)
  俺が死んだらきっとトシは…(じりじりと高杉へ近づく)。
高杉 (唸るように)…俺があいつを失えば…俺は…もう生きられねェ。(刀を構えなおし近藤の首へあてる)
近藤 (高杉を無視し大きな声で)トシ!トシッ!迎えに来たぞッ!
高杉 てめェェェェ!!!(刀を近藤の首へ振りかざす)
   (足音がし、土方が部屋から出てくる)
土方 なんだ?大きな声で…。
高杉 とう…しろ……。(刀を落とす)
近藤 (眼を輝かせ)トシ!!遅くなってスマン!迎えに来たぞ!!


第 四 場 ( 土方・近藤・高杉 )

  (永き間。土方はそろそろと近藤へ近づく)
近藤 トシ、永く待たせて本当にすまなかった!道場再興が思うように捗らなくて時間がかかってしまった。
  ようやく再興もなって、お前を迎えに来たぞ!!
  (土方の肩を両手で掴む)
土方 (驚きつつ)こ…どう……さ…ん?
近藤 あぁ、そうだ。近藤だ。
  (今度こそヒシっと土方を抱きよせる)
土方 (近藤の胸を腕で押し、離す)
近藤 トシ、どうした?俺だぞ。
  ほら、ちゃんとお前の扇も持ってきた!(扇を土方へ見せる)
土方 おれの…おうぎ…。
近藤 あぁ、そうだ。トシの扇だ。それでトシの持っている扇は俺の扇だ。
土方 おれの…扇…近藤さんの…おうぎ…。
  扇がどうかしたのか?扇を探しにきたのか?
近藤 トシ。ちがうぞ!トシを捜しにきたんだ!トシを迎えに!!
土方 近藤…さん?
近藤 そうだ!俺だ!近藤だ!!
土方 (永き間。 かすかに頭を振る)ちがう。近藤さんじゃ、ない。
近藤 何を言ってるんだ、トシ!俺を忘れたのか?真選組を忘れたのか?
土方 いや、よく似てる。ずっと思っていた顔と同じだ。だが、世界中の奴の顔は死んでいて、近藤さんの顔だけは生きてた。だが、ちがう。
   あんたの顔は…死んでるから。
近藤 え。
土方 あんたも髑髏(されこうべ)だ。骨だけの顔…。骨だけの眼でどうしてそんなにじっと俺を見るんだ?!
近藤 ト…シ…。
  (ガシっと土方の両肩を掴みゆする)しっかり俺を見ろ!見てくれ!
   トシがずっと待ってた俺だ!近藤だ!!
土方 見てるさ。あんたよりずっと。(高杉に)晋助、俺をだます気なんだな!だまして無理やり俺を旅へ連れていくつもりなんだな!こんな見ず知らずの奴を連れてきて近藤さんなんて言わせたんだろ。待つことを、きのうも、きょうも、あしたも、同じように待つことを俺にあきらめさせようとしたんだな。俺はぜってぇあきらめねぇ!もっと待ってやる。待つ力が自分にまだ残ってるかぎりな。俺は生きてる。死んだ人の顔はすぐわかるくれぇにはな。
高杉 (近藤に。ものしずかに)てめぇはもう、帰りな。あきらめろや。
近藤 (未練を抱え)トシィィィ!!
   (土方は応えずソファに腰かける。無言。近藤はずっと見つめ続ける。永き間。突然近藤は踵を返し去る)


   第 伍 場 ( 高杉 ・ 土方 )
作品名:innocent world 作家名:森永 マミィ