いずれ止む
銀時は敵陣の中、刀を右手に、鞘を左手に構えたまま颯爽と駆け回る。ある時は左から右へ刀を振り払うように、ある時は鞘で敵の刀を受け止め、敵を・・・天人を切り捨てる。斬る隙のないようなものには軽く一回転をし、蹴りを喰らわせ、すかさず刀の錆とした。だが、混乱していく戦場の中である。無傷ではいられない。刀が頬を掠めた。一筋の赤い線が輪郭に沿って銀時の顔を色づける。自分の顔に傷をつけた天人を睨みつけた。
「ヒィッ!」
数え切れぬ天人を斬り、返り血を浴びた銀髪に白装束、そして焔を思わせるような紅い眼は天人を怯えさせた。怯んだ天人を切り捨てるのは容易い。軽く刀を頭上から下ろしただけで綺麗に赤に染まっていった。動かなくなった物には目をやる事もせず、銀時は再び戦場を駆けた。その姿は仲間から見ても、天人から見ても白夜叉を思わせた。
―ポツッ―
透明な液体により、地面が色を変えた。そしてソレは次第に轟音と共に地に降り注ぎ、天人を後退させた。同じように銀時の仲間たちも退き始めた。その中で銀時は一人、打ちつける雨の中立ち尽くしていた。放心しているように見える。突如、黒い空が白く光った。何処かに落ちたのだろうか、けたたましい雷鳴が鼓膜を激しく振るわせる。同時に地が怯えたように震えた。銀時はそれに反応したのか、帰路につこうとした。ふと足に何かが当たる。
「・・・・・・っ!」
戦の中に果てた仲間だった。目を見開き、怨めしそうにこちらを向いている。銀時は一歩下がった。
突然、肩に重みを感じた。肩越しに振り返ると、朽ち果てた仲間と思われるものが自分に寄りかかっていた。
「なァ、お前は何を護っているんだ?お前に護れているものなんてあるのか?もう分かってるだろ?お前に護れるものなんて何もねーんだよ!」