いずれ止む
肩を落としつつ、銀時の着替えを脱衣所に持って行く新八。
「なぁ、新八」
水音のする風呂場から声がかけられた。
「なんですか?いちご牛乳くらい後で自分で出してくださいよ。」
「・・・護るって難しいな」
「え?」
銀時から後の言葉はなかった。新八は銀時の言葉に首を傾げつつも脱衣所を後にした。少しして銀時が髪をタオルで拭きながら出てきた。ちょうど空も晴れて、日が差し込んでくる。窓の外を見た新八が言った。
「皆で散歩にでも行きませんか?虹が見られるかもしれませんよ?」
「虹アルか!?私、見たいネ!!よし、銀ちゃん、定春行くアルよ」
神楽が足早に玄関に向かう。定春はゆっくり後を追った。その様子を見て銀時が呟いた。
「まだ髪が濡れてんだけど」
「銀さん」
なんだぁ?といいながら銀時が振り返った。新八はまだ窓の外を見ていた。
「僕や神楽ちゃんには銀さんの過去は分かりませんよ。ですがね、今は同じ万事屋として、家族として一緒にいるつもりです。だから一言だけ、言わせてもらいます」
新八が銀時を見た。瞳には僅かに怒りの色が見受けられる。
「僕や神楽ちゃんは簡単に零れ落ちたりなんかしませんから」
銀時が目を見開いた。新八はすぐに視線を下方に落として横を通り過ぎたので、それに気づかなかった。ふと新八の足が止まる。
「銀さんは十分に僕達を護ってくれていると思いますよ」
そして再び歩き出した。銀時は新八に届かないように、小さい声で言った。
「二言いってんじゃねーか」
その口元は僅かに弧を描いていた。そのまま立っていると、神楽が玄関から顔を出した。
「遅いネ!レディーを待たせるなんて男の風上にも置けないアル」
「わぁーったよ。ったく」
時間が経ったために、銀時の濡れて若干ストレートになっていた髪がうねりを打ち始めていた。銀時が頭を掻きながら玄関を出る。先に出た神楽が階段の途中で足を止めた。
「あ、虹!」
指の先を追うと、ビルとビルを繋げる橋のように虹が見えた。
「綺麗じゃねーか」
そのあと万事屋一行は少しの間、階段に座って虹を眺めていた。