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転がす句点

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カラーギャングの創始者にしてリーダー兼教師であり独身の魔法使いである竜ヶ峰帝人は、待たせている相手を目の前にして、一生懸命に小動物染みた小さい一口で咀嚼を繰り返す。喉を最後の一欠けらが通り、ようやく会話する雰囲気をちょうだいした。
相も変わらず妙に近いとも遠いともさえ思える一定の距離を取り合っている。それは後で思考するとして一先ず横に置く。他の教師は授業や所要で席を外しているので、遠慮なく笑顔で世間話を切り出した。



人生の中で中年が占めるのは半分以上だ。そして時間の流れというものは、あの日あの頃の青春時代と、現在の倦怠感が付き纏う日々で大いに異なる。
高校で先輩に出会って、大学も専攻こそ別であったが同大に進学。のち、小規模の戦争があちこちで未だ燻ぶる池袋の母校に戻り、共に教職に就いた。自分が教師になるなど、出会う以前は欠片も視野に入れてなかったが、これはこれで満足している。思い出の中に浸り続けるのも、まあ決して悪くはないということだ。
信じられないくらいに時として大胆な先輩は、同時に信じたくないまでに臆病でもある。園原杏里とは定期的に幼馴染も加えてお茶をする程度の仲に落ち着き、最早それ以上の関係へと発展することは諦めているらしい。
高校生時代に張り巡らせた情報網も、己に火の粉が降りかからなければいいと警戒程度に目を通すのみだ。喜劇も悲劇も同じこと、何処か別の所でやってくれと言わんばかりである。あの危ういまでの探究心は、まるで年頃の熱病扱いに沈鐘し切っている。跡となり辛うじて残ったが、憶えていた筈の痛みと同じく薄れている俺の手の甲の傷に同じく。


なんてことない風にさり気なく話題を、事実とほんの少しの嘘などで鍛えた舌にて紡ぎ出す。
「先輩、そういえば女子生徒からラブレター貰ってましたね。こんな僕らの年でも貰えるのかって意外でした」
先輩は特別童顔で10代でも通るけど、という言葉は調子に任せて滑らしはしない。その後が大変になることを、年月から学んだからである。
食後のお茶を、隠居よろしく啜っていた先輩が気管にお茶に通してしまったらしく、大きくて丸い瞳に薄っすら涙を溜め込んでこほこほやっている。
「青葉君それ何で知ってるの」
「いやだなあ、先輩のことなら何でも知るべきだと思っているからですよ」
それ違う、何か変、と根付いた歪みに今更な苦言を呈される。だが平和惚けした空気がすっぽりと覆い、それは矯正されずに表から引っ込んだ。
作品名:転がす句点 作家名:じゃく