省エネにご協力ください。
電気が消され、周囲の高層ビルによって太陽が遮られたことにより薄暗くなった事務所。
なぜか先ほどよりも室温が上がったような気がして、新たな汗が頬を伝った。
「トムさん、暑いっすね」
静雄は努めて平常心を装った。ここで恥じらったり流されたりしたらそれこそ本当に自分はこの男とオフィスセックスなどというAVじみたことをしてしまうだろう。それだけは、断じて、あってはいけない
「ああ、暑いな」
トムの頭の中は非常に冷静であった。その思考自体はたしかに沸いているといっても過言ではないがそんなことは今のトムにはどうでもよかった。
いまだに混乱しているであろう可愛い後輩の、汗ばむ手をにぎりしめると距離を縮めた。暑い。
「さて、ここで問題です」
「・・・なんすかいきなり。てか近いっす」
静雄のそんな言葉は華麗にスルーし、二人の顔の間に、一本指を立てた
「一つ。今の気温は」
「27度っす」
「良くできました。もういいたいことはわかるな?」
たぶんわかってないだろうけど、という言葉は呑み込んで、トムはゆっくり静雄の耳元まで顔を寄せた
――俺らであと1度、あげてやろうべ
作品名:省エネにご協力ください。 作家名:燐華