午睡の合間に見る夢は
「曖昧だな」
「貴殿を捜すのに時間が掛かかりました。俺は時計を持っておりません。これで満足でしょうか」
「……悪かった、俺が悪かった」
両手を一度顔を横に掲げ、降参のポーズを取った後、余り執着する様子も無しに立ち上がり、衣服に付いた土を払う。立ち上がった事に因り、掛かる影が深さを増した。自然、パーシファルが見上げる形となる。
するり、と手から零れ落ちる水の様に、擦り抜けるアーベルジュを慌てて振り向く。
「何処へ行く心算で!?」
「着替えるんだ。こんな格好で皆の前には立てないだろう? あぁ、着替えは覗くなよ、俺にそんな趣味は無いからな」
にやにや、と口元に笑みを浮かべながら揶揄するように投げられる言葉。わざわざ探しに来てやった事を言われているのだろうか。不愉快に打ち震えながら、
「俺にも無い!!」
顔を真っ赤にしながら叫ぶと、堪えきれないようにアーベルジュが声を上げて笑う声が聞こえてくる。
「いやいや、そんな事は百も承知だよ、パーシファル卿」
「あんたなぁ…ッ!あぁもうあんたになんか絶対敬語なんか使わねぇ!」
自棄になって叫ぶと、余計に愉快なのだろう、笑い声が大きくなる。歩みは止める心算はないらしく、その背は小さくなっていく。
「俺もお前に敬語は使わんようにしよう」
にやにやと笑う、その顔が気に喰わなくて、到底追いつけないような気がして、ムキになって、駆けだした。
作品名:午睡の合間に見る夢は 作家名:nkn