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彼が彼女になったなら①

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日常が突如として変貌を遂げる。
いつも通りの朝、いつも通りの風景、いつも通りの自分。

いつも通り…

「ない、ある、ない、ある…え?」

いつも通りじゃない自分。
あるはずのものがなくて、ないはずのものがあった。

「女の子になってる…」

その事実に辿りついた時、ぐらりと世界が揺れた。



「と、りあえず、今日はバイトだし、行かなきゃなんだけど…」

よろよろとふらつきながらも、現実を見ろ、と己を奮い立たせるように目線を前へと向ける。
鏡に映る己の姿は、男だと言っても通用するかどうかの瀬戸際かと思われる。
背も縮んでいて、どことなく丸みを帯びている身体。
胸の膨らみは大してないけれど、腰のくびれはきっちりできていて。
当然普段着用している私服は、サイズが合わないはずだ。
どうしたらいいんだろう、と頭を捻る。
もちろん、このような経験はしたことがないので、解決策が皆目見当もつかない。

「考え込んでも仕方ないよね」

その結論に至った頃には、時計の針が既にバイトに行かなければならない時刻をさしていた。
慌てて何時も通りに私服に腕を通し、鏡の前で軽く身なりを整える。

「バレない、かな…」

前髪を少し手で遊ばせながら、無意識に眉間に皺を寄せる。
やっぱり常よりワンサイズ以上小さくなっている自分。
服もだぼっとしているし、不自然と言えば不自然なのだけれど。
とりあえず、今日一日バレなければ、明日からも大丈夫だろう。
そうタカを括って出勤したんだけど。
作品名:彼が彼女になったなら① 作家名:arit