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彼が彼女になったなら①

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なるべく人に会わないように更衣室に辿りつこうと思っていたのに、休憩室には既に出勤していた佐藤くんが居た。
まずいと思いながらも一応は平静を装う俺に、普段通りに挨拶してくれる彼が、俺を捉えた瞬間少しだけ目を見開かせた。
それに気付いた俺が逃げるよりも、佐藤くんの口が開くのが数コンマ早かった。

「相馬、お前小さくなってないか?」

いきなりバレた。

「え?そうかな?いつも通りだと思うけど」

あはは、と引き攣った笑みを浮かべながら、男子更衣室に逃げるように駆け込んだ。
ばたんとドアを閉めると、詰めていた息を大きく吐いた。
やっぱり縮まった背丈は誤魔化せないか…。

うんうん唸っていてもしょうがない。
そう思って、ロッカーから制服を取り出し、迷いもなく私服を脱ぎ捨てたその時。

「相馬、やっぱりお前小さくな…」

ノックもなしに勢いよく開いた扉の先に、輝くような金色の髪をした彼が立っていた。
そして、俺を見遣った瞬間、人形のようにかちんと固まってしまった。
もちろん下着など着けているわけもなく、惜し気もなく晒されている俺の上半身が、彼の目にはっきりと映し出されていることだろう。

(こんなことなら、さらしでも巻いてこればよかったな)

そう思ってみても後の祭りである。
今は女の身体ということもあって恥じらいという感情が多少なりとはあるらしく、少し頬を熱くさせながら脱ぎ落した服で胸元を覆ってみる。

「見ちゃった、よね、あはは」

もう乾いた笑いしか出てこない。
いや、俺としては、笑うより泣きたい。
元に戻せ!と大号泣しながら神様がいようものなら、その存在に縋りついて頼み倒しているところだ。
佐藤くんは相変わらずドアノブを握りしめたまま固まっている状態だし。
どうしてくれようこの状況、最早俺の頭は許容量オーバーだ。

「とりあえず佐藤くん、ドア閉めてもらっていいかな?」

そう言葉を投げかけてみると、ぼけっとしながらもその意味を理解したのか、ばたんと扉を閉めてくれた。
扉の外でがん、とか、ごん、とか大きな音がしたけれど、その音の原因は彼以外有り得ない。
彼の動揺している様が窺えて、今の己の状況など忘れて思わず笑みを溢す。

「さて、なんて説明したらいいのかな…」

あの状態では、どういう風に話しても卒倒されそうだ。
というよりも、説明してほしいのはこっちの方だ。
はぁ、と盛大に吐いた溜息が、一人で使用するには少しばかり広い空間に吸い込まれていった。



(軽い眩暈と、それから頭痛…ああ神様、どうして俺に意地悪するのですか!)
作品名:彼が彼女になったなら① 作家名:arit