苦さも甘さ
臨也の上に覆いかぶさると、ベッドが軋む音が響いた。
「もう十分調べたんじゃないの?あれでわからないんだったら相当な味音痴だ。弟くんにもう二度と有名な店の食べ物を買ってこなくていいと言ったほうがいい。コンビニのプリンで十分だよ」
その言葉のわりに、指を絡めていないほうの臨也の手がするりと静雄の腕を撫でた。
「それに、シズちゃんは苦いものが嫌いだろ」
そのときの臨也の目の色が、ほんの一瞬、本当に一瞬だけ沈んだように見えた。臨也を卑怯だ、と強く思うときは、人を謀っているときでも、雑事の中心から逃げているときでもなく、こういうときだ。普段は信じさせないことを徹底しているふうに見えるのに、瞬きの間くらいに気持ちを出すときがある。
本気で静雄を信じさせる瞬間を持っている。それがずるい。
「……ああ、大っきらいだな」
「ならあんまり食べないほうが――」
「でも、俺はタバコは好きなんだ。甘くもねぇし、いい味でもねぇけどよ。タバコの苦味だけは好きなんだ」
「俺はタバコってわけ」
「ああ。毒にしかならねぇけどな。嗜好品なんてそんなもんだろ」
臨也が楽しそうに笑い、静雄はその唇を味わうべく、唇を重ねた。
臨也は苦い。だけど唇だけは甘い。だからいつまでも味わっていたくなる。
ふたりの息の上がってきた中、臨也が静雄の中心に触れた。
「身体はこんなに成長してるのにねぇ。味覚はお子さまなんてすごいギャップだよね。まあ、俺は好きだけど、この身体」