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庭園と煙草

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此処にいますよ、と教えられて来たは良い物の、どう声を掛けて良い物か分からない。何年の付き合いになるのか、数えたくも無いほどの付き合いの筈なのだが今だ彼の上司の性格は掴めない。今はもう国内の内政も落ち着いており、最高決定権を持つ彼の決済を待たなくともなんとかやりくり出来ている。それは彼とシュウが何年も何年も掛けて完成させた形式であり、二人の努力の結晶だ。けれども、其れは彼がフラフラを遊び歩いて良いという事ではない。然るべき場所に然るべき人物が居る。それだけでやる気になる人間は数多いからだ。……勿論それはシュウ自身も含めてなのだが。
ここでぼんやりと彼の人の背中を見つめていても何の解決にもならない。それに此処は壁が無くて寒風吹きっ晒しだから、長時間居たら風邪も引くだろう。事実去年彼は普段着の侭外で城下の子供達と雪合戦をして物の見事に風邪を引いた。その時本人は「流行には乗っておく性質なんだ」と笑った。流行りに流行った風邪のお陰で、看病する人間が足らず、自然シュウがその役目を押しつけられた。ホウアン曰く「あの方の手綱を握る事が出来るのは貴方だけですよ」との事だった。看ている事はともかく病人料理まで作らされて辟易したが、完治してから暫く(といっても一週間も経たず、何時も通り傍若無人人間に戻ったのだが、)は大人しく執務をしていたというのは儲け物だろうか。

そこまで思考を巡らせて溜息を吐いた。どれ程の言い訳を並べ立てたところで今から上司に声を掛けて首に縄でも付けてでも引っ張っていかなければ行けないのだ。何分明日はトランの建国記念の式典に上司共々招かれている。その打ち合わせもあるし準備もある。国のトップと次席が国を空けるというのも考え物だとは思うのだが、トラン側としても、今年は英雄が帰って来ているので出来れば縁のある方々でと請われたのだ。断ってしまえば関係に歪みが生じる。デュナンは統一国家となってまだ日が浅い。ここで隣国であるトランと軋轢を生むのは決して得策とは言えない。……というのが元首である上司の意見だ。尤もそんなご大層な名目は建前で単に平和すぎる日常から脱出したいのだろう。理解していながら指摘しなかったシュウも似たような思いを抱いている。ただ、シュウの場合、自分たちが不在でも問題が起こらないかどうかの実験も兼ねている。
「シュウ」
作品名:庭園と煙草 作家名:nkn