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浮かれるなってほうが無理な話だよ!

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爽やかな淡いグリーンのシャツ。
黒のTシャツ。
白のだらっとしたベスト。
モスグリーンと白のジップアップ。
・・・どれも微妙だ。


「・・・デートって感じじゃないよねえ・・・」


帝人は呟いて天を仰ぐ。
狭くて古い室内に、ばさばさと放り出されて散らかった服をもう一度ぐるりと見回したけれども、今まで気づかなかった素敵な洋服が、忽然と現れることなどはない。
お金もないし、確かに私服にはあまり気を配ってこなかったとは、思う。何しろ今まで彼女居ない暦=年齢だったのだからしょうがない。特別もてたいと思ったことだって特になかった。けれども今現在は、状況が違う。
つい先日の話だ。記憶に新しい。竜ヶ峰帝人には恋人ができてしまった。
できてしまった、という表現はちょっとふさわしくないような気もするが、実際帝人は彼を恋人にするつもりなど欠片もなかったのだから仕方がない。大体、全然好みじゃない。にもかかわらず、なんかもうやたらと一杯一杯な彼が、可愛く見えてしまったのだから、本当に本当に仕方がないのだ。
可愛いはずがないんだけれどもなあ。と帝人は息を吐く。
折原臨也。それが恋人の名前だ。帝人の8歳年上で、情報屋とかいう非常に怪しい趣味を生業としている。
向こうは向こうで、帝人を可愛い可愛い言うので、まるでバカップルのような現状だ。何これ怖い。っていうか寒い。だがいかに寒かろうとそれが現実なのだから仕方がない。
思い出すこと一週間前、なんだかんだでめでたくカップル誕生となった帝人は、しかし誰かと付き合うというのが初めての体験なので、どうすればいいのか分からないと正直に言った。言ったら、臨也は真剣なまなざしで、何かとても大切なことを言うように厳かに、「デートしよう」と告げたのだ。
デート、だと?
思わず目を丸くしてまっすぐ見返したなら、3秒後に真剣な顔がばばばっと赤く染まって、俯きがちに視線を外された。そして臨也にしては必要以上にどもった声が、
「だって、恋人っていったら、デートだもん。基礎の基礎でしょ。手を繋いで街を歩いちゃったりなんかして、えっと、だから、つまり、時間を共有することでお互いを良く知れば、おのずと次のステップに移れるっていうか。だから、もう何なの!何回も言わせないでよ!デートしてよ!」
と、最後のほう逆切れつつも言うので。
「あ、えっと、はい」
こくんと頷いた帝人に、逆に臨也が目を見開いて。
「ぅえ、いいの!?」
「・・・え、断るべきでした、今の?」
「だっ、だめ!断るとかだめ!っていうかだめ!絶対だめ!」
「はあ、あの、だから。いいですよ、デート」
なんか勝手に泣きそうになる臨也に、哀れみと言うか同情と言うか、まあそんな感じでOKを出した帝人だった。っていうかその後、自分で言い出したくせに「ででででーと」とぽつりと呟いて真っ赤になった臨也は一体なんなの、と帝人は回想する。ほんと、なにあの生き物。ときめく。
とにかくそんなわけで、帝人は明日のデートのために服を選んでいたのだが、これがまたいまいち微妙な現状である。
デートってからには、そりゃ、デートだ。
「いつもどおり」ログアウトで「いつもと違う僕」ログインすべきなのは分かっている。分かっている、が。
「なにを着ていけばいいのさ・・・」
そんなくだらないことで悩みつつ、帝人は心の中で正臣に助けを求めるのであった。まあ実際に助けを求めたら、相手が臨也さんってだけで猛反対されそうだから、しないけど。





一方こちら池袋某所。
アニメイトに繰り出したオタクコンビをワゴン車で待つ門田は、急にどんどん!と叩かれた窓に目をやる。
と、そこにいたのは高校時代からの、なぜか腐れ縁、折原臨也であった。
「ドタチン!ドタチンってば!ねえ!」
どんどんどん。
激しく無視したい、無視したいけれども、無視したら最後だ。この男のことだから、ワゴン車の一台や二台、軽く潰すだろう。それが分かっているので、門田は渋々ドアを開ける。
「わかったからそう窓を叩くな、割れたらどうする」
「そんなことは今どうでもいいよ!それより俺が恥を忍んで相談に来てるって言うのに無視したいと思うのはおかしいよねドタチン!この車そんなに潰されたいの!?ねえ潰していいの!?」
「思考を読むな」
あと、ドタチンはやめろ。
「ああもうそんなのどうでもいいんだってば!ドタチン!デートってどこいけばいいの!?」



「はあ!?デートぉ!?」



お前が!?折原臨也が!?目が点になった門田の目の前で、だからデートだよ!と涙目になりながら臨也が叫ぶ。
「たぶんきっとおそらく初恋の相手と夢じゃないなら両想いになって、次の日曜日は幻聴でなかったらデートの約束をしたんだけどどうすればいいのか全然わかんないって言うかどうすればいいのドタチン助けて!」
「たぶんとか、きっととか・・・いちいち予防線はるあたりが鬱陶しいな」
っていうかなんでそれを俺に聞くんだ。と門田はうんざりとした顔をする。そんなのもっとデートちゃんとしているような人間にきけばいいのに。といえば、シズちゃんや新羅に聞けないでしょ!と返された。友達いねえんだな・・・。そういやそうだったよ・・・。
「初デートだし年上だしできればエスコートしたいんだよ!」
「へー」
「ででででも、どどどどこに行けば、頼れる大人の男的なあぴーるができるかと言う問題がががが」
「落ち着け」
これが落ち着いていられるか!とばかりに臨也はそわそわと手足をばたばたさせ、話している間にも意味もなくくるりと回ったりジャケットをずり下ろしてみたりそれを直して着てみたりしている。テンパりすぎだろ。
「あーの、な。何も特別なことをしなくてもいいじゃないか。普通にボーリングしたりカラオケ行ったり・・・」
「ボーリングなんかしてあの子の手首がぐきっていったらどうするのさ!カラオケなんて密室で2人きりじゃない絶対却下なにそれ恥ずかしい照れる怖い耐えられない」
「映画とか・・・プラネタリウムとか」
「・・・暗闇に誘うのってさ、そういう、なに、下心的なものがあると思われたりしない・・・?」
「ないのか、下心」
「ありまくりだから困るんだよ!」
もっと真面目に考えてよ!と怒鳴る臨也に、門田は面倒くせえな、と頭を抱えた。恋は人を変えるというが、ちょっと変えすぎだろうこれ。
「あるならいいじゃないか」
なので、面倒なので、押し切ることにする。
「あるんだろ、下心」
「ある・・けど」
「じゃあ暗いところ誘ったって変じゃないだろ」
「え?そ、そう?」
「下心ないなら誘うのはおかしいけど、下心あるなら道理だよな?」
「・・・そう、かな?」
「そうだろ」
「そ、そっか」
「プラネタリウムとかいいんじゃないか。サンシャインの上」
「う、うん、あのさドタチン、それでさ・・・」
なに着てけばいいの?
頼り切った目で見られて、門田は眉をぴくりと上げた。



知るかボケ。
その一言が言えなくて、夏。