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浮かれるなってほうが無理な話だよ!

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「ファーコート着てないの初めてですよね?」
オレンジをベースにしたTシャツに、グリーンのシャツを羽織ったスタイルの帝人が、待ち合わせにやってきた臨也を見て不思議そうに言うので、臨也はくるりとその場で回ってみせた。
「今日は情報屋ログアウトだからね!」
「ああ、なるほど」
「っていうか帝人君がオレンジって珍しいね。それ俺見たことない服だなあ」
「あなたは僕の服を全部把握してるんですか・・・?まあ、昨日買ったものですから」
把握してるんだろうなあ、とうんざりしながらも答えたら、俺のために買ったの!?とうれしそうに笑うので、まあいっかと。いつものナナメ掛けバックの紐を握りながら、帝人はどこに行きましょうか、と尋ねた。場所は臨也が決める事になっている。
「プラネタリウムだよ」
「・・・サンシャインの上の?」
「帝人君は行ったことないんじゃない?あそこはCG放映がメインだから、普通のプラネタリウムと違うんだ」
チケットも買ってあります、と差し出してくる臨也は、傍目から見ても浮かれている。
というか笑顔が蕩けそうだ。臨也なのに。なにこの今なら死んでもい!みたいな顔。普段とのギャップありすぎるんですけど。
「臨也さん昨日、寝てないでしょう」
帝人はまっすぐに臨也の目を見て尋ねた。その目の下に、うっすらとくまが見える。まあそうは言っても、帝人も寝ていないんだけれども。だってデートなんて。初デートだし。浮かれてますよ悪かったですね!
「まあ俺のことはいいから、プラネタリウムで寝たりしないから!とりあえず行こうか!」
弾むような足取りで帝人を押して、サンシャイン通りに繰り出す。池袋の有名なデートスポットであるサンシャインビルディングは、いくつかのビルから成り立っているので、初めて来たとき帝人は迷ったなあ、と懐かしく思い出したりとかして。
歩行者天国になっている道路をダラダラと歩きながら、帝人はちらちらと隣の臨也に目をやり、言うべきか言うまいか迷った末に、溜息と一緒に言うことにする。



「あの、さっきから何回か歩きながら回ってますけど、人にぶつかりますよ?」



普通に歩けないのかこの人は。
と突っ込みを入れたくなるほどスキップしてみたり回ってみたり。危なっかしいなあもう、と注意を促してみたならば、臨也はぴたりと歩みを止めて、自分自身の体をじっと見下ろし、首をかしげた。
「・・・俺、回ってた?」
気づいていなかったのか。帝人ははっきりきっぱりと頷いた。
「はい、思いっきり」
なんであんなくるくる回っていて目が回らないのか。普段からくるくる回っているとでもいうのだろうか。
なんていうか、分かりやすい人だなあと帝人は息を吐いた。ときめくんですけど。
「臨也さんって、子供みたいですよね」
サラリと口をついた言葉に、臨也が目を見開いた。
「俺は大人だよ!?」
っていうか大人の男だよねどこからどう見ても!と主張する臨也をなだめ、まあとりあえず行きましょう、と道を促す帝人は、ぎこちなく回らないようにと意識して踏み出した臨也の姿にもう一度苦笑する。
「臨也さん。今度は右足と右手が同時に前に出てます、それじゃ転びますよ」
「・・・」
苦虫を噛み潰したような顔で、ぎゅうっと目をつむって、開いて、それからようやく普通に歩き出した臨也が、なんか普通に可愛く思える。ああ僕いつからこんなに趣味悪くなったんだろう、みたいな。でもかわいいよね、かわいいよねこの生き物は!ねえ!?僕がおかしいんじゃないよね!?心のなかで正臣に同意を求めて、返事は聞いてないとばかりにイメージをシャットダウン。だって正臣が同意するわけがないもの。
「あ、臨也さん!サンシャイン通り過ぎちゃいますよ!」
すたすたと歩き去ろうとした臨也の服をつかんで止めれば、やっちまった、という表情で臨也が振り返る。そのままうー、あー、と呻いて、臨也は顔を手で覆った。
分かっちゃいるけどいっぱいいっぱいだ。もうなんなんだこの人。
「・・・臨也さん、やっぱり眠いんじゃ・・・?」
「・・・テンション上がりまくって眠くならなかったんだもん・・・」
「え、まさか貫徹!?」
「そのまさかだよ悪い!?」
修学旅行だって学園祭だってこんな眠れないことなんてなかったのにー!と叫んで臨也は天に手を伸ばし、ワーッと回った。え、なにこのテンション。乗るべき?帝人は落ち着いてと臨也をなだめながら、周囲の痛い視線を必死で無視した。一緒になって回ったら新たな都市伝説誕生だ。そんなのはだめだ。
やけになっているのか、どうせ子どもっぽいよ!だって楽しみだったんだもん!帝人君冷たい!と意味のわからないことを叫びながら悪目立ちする臨也と、サンシャインと、人ごみの好奇心に充ち溢れた視線を交互に見て、帝人は決意した。
もうここは僕が何とかするしかない。
「臨也さん!」
だんっと大地を踏みしめ、そのシャツの胸ぐらをガツッとつかみ。
えーっと、こういうときはどうすればいいんだ。黙れ?煩い?そういうのって恋人っぽくないよね。えーっと、他になにかないかな。一言でカッコよくきまる、この人を黙らせる言葉。通行人の迷惑です!じゃありきたりすぎる。えーっと、場所を考えてください!だと場所さえ改めれば騒いでいいって言ってるみたいだし、えーと、えーと・・・!
帝人は混乱した。
そして何かがぷっつり切れた!




「ああもう煩い!いいから黙って「私」についてきなさい!」





帝人は知らない。
頬を染めて「帝人君かっこいい・・・」とか、臨也がつぶやいていたことも。
通行人が「あの折原臨也を黙らせた・・・!」と、やたら尊敬のまなざしで見ていたことも。
いつの間にか手をつないでぐいぐいと臨也の手を引いていたことさえも。
そんなことは、デートの前にはどうでもいいことだ。
貫徹?僕もです。
だって初デートなんだから、仕方がないじゃないか!