放課後セレナーデ
☆
「───だれか、いたの…?」
「草壁さんです。もう出られましたよ」
「くさかべ…ああ、見回り」
もそりと身動ぐ気配がして、雲雀が体を仰向け、綱吉を見上げる。
「さっきここを出られたばかりだから、まだ近くにいるんじゃないかと思いますけど」
「良いよ、偶には任せる。…それより、未だ眠い」
くあ、と小さくあくびをした雲雀は、少し潤んだ黒い瞳で綱吉に手を伸ばす。
「…ここはとても、寝心地が良いからね」
「そうですか?良かった」
「今度から昼寝の時には、いつもお願いしようかな」
「え、ええっ」
驚く綱吉の頭を引き寄せれば、さらりと蜂蜜色のカーテンが出来る。
ふわりと重なる、あまく柔らかい感触。
「…おやすみ」
「……お、おやすみなさいです…」
唇を掠める甘えた低い声に、綱吉が抗えるわけがない。
すうっと再び閉じられた黒い瞳に、綱吉は頬を紅潮させる。
再びその瞳に見つめられることが出来るようになるまで、あと数十分。
「───良い夢、見てくださいね」
精一杯の勇気と願いを籠めて、綱吉は雲雀の額にそうっと口づけを落とす。
それに彼が気づいたのかどうかは───ゆるりと弧を描いた彼の唇が、物語っている。