NeverMore3
見れば、雪子とクマが多くの影に囲まれていた。
俺と完二の声に、何体かが振り向く。
「なっ・・・鬼!?」
その顔は、よくある「赤鬼」そのままなのだが、何故かジャージを着ていた。
「何で、鬼がジャージ着てんだよ!!」
もっともなことを叫んで、完二が走っていく。
俺は、鬼が、雪子達に襲いかかろうとしているをの見て、
「ペルソナ!」
・・・・・・え?
何も起きなかった。
ただ、俺の声が空中にかき消えただけ。
「何で・・・」
ペルソナが出せない?
テレビの中の異変と、何か関係があるのか?
混乱する考えを整理しようとした時、
「コノハナサクヤ!」
雪子のペルソナが現れ、鬼達を焼き払う。
「青葉先輩!何ぼーっとしてるんすか!!」
完二の声に、我に返った。
気がつけば、あちこちから鬼が現れ、こちらに迫っている。
「逃げるぞ!」
考える間もなく叫び、右手側の扉へと走り出した。
雪子、クマ、完二も駆け出し、出口を目指す。
鬼達は、何故か懐から升を取り出すと、突然豆を投げつけてきた。
「ちょ!いてぇ!!節分じゃねえんだぞ!!」
「何するクマー!!しどいクマね!!」
バラバラと降り注ぐ豆に、完二とクマが騒ぐ。
「いいから走れ!!」
豆の嵐を全力で駆け抜け、三人が飛び出したところで扉を閉める。
バラバラバラバラ!!
派手な音を立てて、扉が豆を遮った。
「何だ、此処は」
出たところは、何故か校舎内の廊下。
教室の中に、背の低い椅子と机が、規則正しく並んでいた。
「・・・何だってんだよ、一体。体育館の外が教室って、どんな作りしてんだっつーの」
ぶつぶつ言っている完二に、雪子は廊下の先を指さして、
「そんな場合じゃないみたい」
指さす方に視線を向ければ、廊下にぎっちり詰まった大玉が。
「大玉転がし・・・運動会であったね」
「ああ。懐かしがってる暇はなさそうだけどな」
雪子の言葉に頷きながら、じりっと後ろに下がる。
大玉が、じわりとこちらに動き出した。
「センセイ、あの玉、もしかしなくても、こっちに来てるクマよね・・・?」
「はい、クマ君、よく出来ました。・・・走るぞ!!」
じわじわと動き始めた大玉は、徐々に加速して、こちらに迫ってくる。
開いていた教室の扉が、派手な音を立てて閉まった。
「くそっ!!自動ドアかってんだよ!!」
全力で走りながら、完二が悪態をつく。
ぴしゃん!ぴしゃん!!と、先回りするかのように扉が閉まっていき、横にかわすことも出来なかった。
みしみしときしむ音が、背後から迫ってくる。振り返る余力もなく、果てしなく続くかのような廊下を疾走した。
「センセイ!行き止まりクマー!!」
クマの悲痛な叫び声が上がる。
廊下は行き止まりで、左側にある階段は、防火扉が重々しく閉まろうとしていた。
「滑り込め!!」
防火扉に体をぶつけ、わずかでも隙間を作ろうと、足を踏ん張る。
「青葉君!早く!!」
三人が滑り込んだところで、狭い隙間に無理矢理体をねじ込んだ。
ずん・・・!
すぐ耳元で、防火扉の閉まる音と、突き当たりに大玉が当たったらしい音が響く。
荒い息を吐きながら、三人と顔を見合わせ、その場に座り込んだ。
作品名:NeverMore3 作家名:シャオ