ストローク 1
頼りにしていた父が死んでからというもの、僕には本当に何もなかった。陶芸家になる夢に必死に縋り付いていたのは父がそれを望んでいたから。僕が兄さんの代わりに生きていたのは周りがそれを望んでいたから。望まれていられれば、確かにそこに、自分が生きていると実感できたから。
(――けど、もう、それも終わったんだ)
僕を支えていたものは全てなくなってしまった。
もう僕に陶芸を強制する人はいない。母は父が死んでからまるで僕に興味がないように僕と目を合わそうとしない。そしてそんな僕を笑うかのように、『死んだ』僕の写真が幸せそうにただ微笑むのだった。小さな墓標に刻まれた直井文人の文字。けれどそれはしっかりと執拗なまでに僕の視界に映り込み、ただただ精神を蝕み続ける。
もうろくろを回すことのない掌をぎゅうと握り締めても、その感触はどこか曖昧で、この身体さえもう僕自身のものではなくなっている気がした。
(ねえ、)
(ここにいるのは、誰なの)