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さよならバイビーベイビー

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ここで私が泣いて彼にこの言葉以外を言ったら、きっと彼が二度と立ち直れなくなるのではないかと思ったからだった。
私は涙をこらえ、ただひたすら大丈夫、とだけ言った。
彼が私を抱きしめながら泣いた。
私は、それでもつられず泣かなかった。

それから、私と静雄はあまり二人でいなくなった。
あの事件がきっかけであったことは明白だった。
静雄は私をもう二度と巻き込みたくないと思っていると知っていた。
私も、もう二度とあんなことはごめんだ、と思っていた。
それはしようのないことだった。
あんなことがあってまで、人を愛せるほど大人ではなかった。
高校二年生だ。
そんなに割り切れるはずなどなかった。
そのうち、彼が私に別れを切り出した。
まだ夏というには早すぎて、春というには暑い日だった。
汗が顔を伝って、地面に垂れた。
私は、そうだね、としか言わなかった。
別れることが最善だった。
私は彼の隣に並ぶには普通すぎて、弱すぎた。
彼の隣に並ぶのは、もっと強い人間ではなければならなかった。
それでも、彼を愛したことには違いなかった。
最後に私は、言った。

「それでも、私はあなたを愛したわ。」

彼は泣いているような笑っているような、くしゃくしゃした顔をした。
それから、両手をあのあたたかい手で覆った。
私は、願ってる。普通ではない彼に、どうか普通の幸せが訪れますように。
どうか、彼の隣に並ぶことのできる人が、現れますように。
私は、彼が好きだから。
さよなら、愛した人。

さよならバイビーベイビー、私の愛した人。
作品名:さよならバイビーベイビー 作家名:ErroR