水道管盗難事件
ロシアに持って来させた水を飲んで、プロイセンは安堵の息を吐く。なんで付き合っちまったんだ、俺は。
ぐったりとシーツにくるまったまま横になっているプロイセンを眺めて、ロシアは機嫌よく笑っている。くそっ、ムカつくぜ。そう思ってプロイセンはごろりと体をロシアが座っているのとは逆の方側に反転させた。そこで指先に何か固いものが当たる。なんとなく正体に察しがついて引き寄せると、案の定水道管だ。
元はといえばロシアがこれを庭に置き忘れたのが悪い。しかもまだプロイセンが勝手に持っていったと誤解されたままだった気がする。
「一応言っとくが、これ、庭に落ちてたのを俺が拾って持ってきてやったんだからな、まじで」
「でも庭もちゃんと探し……あぁ、そっか。朝、庭を散歩してる時一旦置いたかも」
呑気な声でロシアが答える。大事なものをどこに置いたのかくらいきちんと覚えとけよ。
「置いたかもじゃなくて置いたんだよ、ったく」
舌打ちすると、ずるいよと水道管を持っている掌の上にロシアの手が重ねられた。脈絡が分からないが、何の話だ。俺は別になにもずるいと罵られるような事はしていない。
「僕の事もぎゅってして」
なんだろうかと思っていると、ロシアにぐいと体を元の位置に戻された。ベッドの端に腰かけているロシアを向くような体勢にされてしまう。そして水道管を握っている手を解かれ、代わりにこれを掴めといわんばかりにロシアの指に絡まれた。あぁ、ほんとにめんどくせぇ奴だな。
「……こっちは無くすんじゃねぇぞ」
勝手に指を掴んだロシアに、プロイセンはとりあえず一言だけ注意してやった。