NeverMore4
side:花村陽介
「よし、買い忘れはないよな?急いでジュネスに戻んぞ」
手分けして、上着の下に装備品を隠すと、三人に声をかけた。
みんなは頷くと、誰からともなく、駆け足で元来た道を戻る。
あの時の、ベッドに横たわる菜々子ちゃんの姿が浮かんできて、必死に頭から追いやった。
大丈夫。絶対助ける。
あの時のようにはならない。
今は、相棒が戻ってきているのだから。
ジュネスについて、もどかしげにエレベーターのボタンを連打する。
こちらの焦りにはお構いなく、エレベーターの回数表示はのんびりと数字を下ってきた。
「ああ、くっそ!早く来いよ、おせーんだよ!」
「ちょっと、落ち着きなさいよ。そんなに叩いたって、エレベーターの早さは変わんないんだから」
里中が、たしなめるように言う。
「んなこた、分かってるよ!」
「じゃあ、静かにしなさい。ただでさえ、あたし達目立つんだから」
・・・確かに。
連休中とは言え、客層は家族連れ中心で、高校生だけでぞろぞろ歩いているのは、目を引いた。
「菜々子ちゃんのこと心配なのは、みんな同じだよ。だからこそ、今は落ち着いて行動しないと」
「そうですよ、花村先輩。青葉先輩も言ってたじゃないですか、『落ち着け』って。やっぱ、青葉先輩って、頼りになりますよね」
「今は、向こうと合流することを第一に考えましょう。その為にも、警備員に目を付けられるようなことは避けないと」
女子三人に責められては、勝ち目がない。俺は、大人しく手を下げて、エレベーターを待つ。
「こんなこと言うのは、あれだけど・・・青葉がいてくれて、良かったよな」
俺の言葉に、里中が「何言ってんの?」と首を傾げた。
「いや、だってさあ、青葉がいなかったら、俺とか完二は、ぜってーそのままテレビに入ってたじゃん?目の前で菜々子ちゃんが消えて、頭ん中わーってなって、すぐ助けなきゃって思って。でも、それじゃあ、自分らが危なくなって、菜々子ちゃんを助けるどころじゃなかっただろうし。やっぱ、あいつがリーダーじゃないと、上手くいかねーな」
「そうだねー。はっきり言って花村じゃ、全っ然頼りにならないしね」
「ぐぁっ!本人目の前にして、そういうこと言うんか!たく、可愛くねーなー!」
「うっさいわね。男がそんな細かいこと、気にするんじゃないわよ」
「全然細かくねーよ!」
「先輩方ー、痴話喧嘩はそれくらいにして、エレベーター来ましたよ?」
りせの言葉に、二人同時に、
『痴話喧嘩じゃない!!』
「・・・とにかく、家電売場に急ぎましょう」
直斗がため息をついて、エレベーターへと乗り込む。
俺達も、慌てて中に入った。
家電売場で、人目がないのを確かめてから、テレビの中へ入る。
目に入ったのは、いつもの場所ではなく、どこかの体育館のような場所。
「な、なんだこれ!?いつの間に、こんなことになっちまったんだ!?」
「やはり、こちらの世界に、何らかの異常が発生したのは明らかですね。急いで、青葉先輩達と合流しましょう」
直斗の言葉に、俺は頷いて、
「ああ、向こうは装備なしだからな。急がねーと、やばいことになって」
その時、ジャージを着た鬼が、ぞろぞろと倉庫らしき扉の中から現れた。
「・・・なんで、鬼がジャージなんだよ」
「ご丁寧に、升まで持ってるんですけど」
里中が指摘した通り、鬼は何故か左手に升を持っている。
りせが、わざとらしい明るい声で、
「なんか、節分みたい。小学生の時、男の先生が鬼の面かぶって、教室に来たことあったし」
「あー、そんなイベントもあったなあ・・・って!うおっ!?何!?」
うっかり小学生の頃の思い出に浸っていたら、突然バラバラと何かが降ってきた。
「何だ!?豆!?」
確認する間もなく、突然豆がバチバチバチ!と弾け出す。
バチバチバチバチバチ!!!
床に落ちてた豆も、連鎖的に弾けだし、体育館に轟音が鳴り響いた。
「くそ!!ポップコーンじゃねえんだぞ!!」
耳を押さえて叫ぶと、直斗が左手にある扉を指さして、
「ここは一旦退きましょう!!向こうまで走って!!」
「分かった!!みんな行くぞ!!」
りせと里中も頷いて、全員で一斉に走り出す。
鬼達が追いかけてくる気配はなかったが、背後でバチバチと立て続けに鳴る音に追い立てられ、全力で体育館を飛び出した。
体育館を飛び出し、校舎へと続く廊下を走る。
やっと音が聞こえなくなったところで足を止め、
「あー・・・酷い目に遭った。りせ、相棒達の居場所、分かるか?」
「待って。今」
りせがペルソナを出そうとした時、突然、足下の影が膨れ上がった。
!?
「危ねぇっ!!」
慌てて手を取ろうとしたけれど、絡みついた影が、りせの体ごと後ろへ飛びすさる。
「花村先輩!助け・・・っ!!」
「この野郎!!りせを返せ!!」
モンキーレンチを手に影に殴りかかるが、捉えたはずの部分はあっさりかき消え、何の手応えもなかった。
それどころか、影は二つに分裂すると、片方がりせを連れ去ろうとする。
「りせちゃん!」
「りせさん!」
里中と直斗も、影を追おうとするが、分裂した影が絡みつき、行く手を遮った。
「この!邪魔すんじゃない!!顔面靴跡の刑にするわよ!!」
「くっ!!こいつら、こっちの攻撃が効かない・・・!」
殴ろうが蹴ろうが撃とうが、影は散っては集まり、絡みついては散る。
「離しなさいよ!!離して!!・・・先輩方!!直斗!!」
「くそっ!!この・・・っ!!りせ!!絶対助けっからな!!」
遠ざかるりせの姿に、そう叫ぶのが精一杯だった。
side:青葉 秋
「はっ!」
気合いとともに降りおろした竹刀が、骨格標本の肩を捉える。
衝撃で砕けちった標本は、そのままかき消えた。
「おらおらー!とっとと成仏しやがれ!!タケミカヅチ!」
「もー!頭にくるクマねー!!キントキドウジ!」
「コノハナサクヤ!」
みんなが当たり前にペルソナを呼ぶ中、俺だけがどうしても失敗してしまう。
何故かを考える間もなく、骨格標本は次々と溢れだしてきた。
「よし!階段まで走れ!!」
手薄になった一角を示して、俺は駆け出す。
三人が階段を駆け上がるのを確認して、防火扉の取っ手を引っ張った。
じりじりとした動きで閉まる扉を無理矢理押して、標本を閉め出す。
中に入り込んでないのを確認してから、俺も階段を駆け上がった。
上りきった先には廊下が面しており、特に何かの気配はない。
周囲に目を配り、どうやら大丈夫そうだと安堵した時、クマが鼻をひくつかせて、
「むむっ、いい匂いがするクマね。これは、カレーの匂いクマ?」
「そういやあ、カレーの匂いがすんな」
「ほんとだ・・・なんか、お腹空いて来ちゃった」
クマと完二の言う通り、どこからかカレーの匂いがしてきて、雪子の言葉に同調するように、ぐぅっと腹が鳴った。
「あー・・・朝、食べたっきりだもんな」
思わず呟くと、クマが両手を上げて、
「センセイ!クマもお腹が空いたクマ!」
「よし、買い忘れはないよな?急いでジュネスに戻んぞ」
手分けして、上着の下に装備品を隠すと、三人に声をかけた。
みんなは頷くと、誰からともなく、駆け足で元来た道を戻る。
あの時の、ベッドに横たわる菜々子ちゃんの姿が浮かんできて、必死に頭から追いやった。
大丈夫。絶対助ける。
あの時のようにはならない。
今は、相棒が戻ってきているのだから。
ジュネスについて、もどかしげにエレベーターのボタンを連打する。
こちらの焦りにはお構いなく、エレベーターの回数表示はのんびりと数字を下ってきた。
「ああ、くっそ!早く来いよ、おせーんだよ!」
「ちょっと、落ち着きなさいよ。そんなに叩いたって、エレベーターの早さは変わんないんだから」
里中が、たしなめるように言う。
「んなこた、分かってるよ!」
「じゃあ、静かにしなさい。ただでさえ、あたし達目立つんだから」
・・・確かに。
連休中とは言え、客層は家族連れ中心で、高校生だけでぞろぞろ歩いているのは、目を引いた。
「菜々子ちゃんのこと心配なのは、みんな同じだよ。だからこそ、今は落ち着いて行動しないと」
「そうですよ、花村先輩。青葉先輩も言ってたじゃないですか、『落ち着け』って。やっぱ、青葉先輩って、頼りになりますよね」
「今は、向こうと合流することを第一に考えましょう。その為にも、警備員に目を付けられるようなことは避けないと」
女子三人に責められては、勝ち目がない。俺は、大人しく手を下げて、エレベーターを待つ。
「こんなこと言うのは、あれだけど・・・青葉がいてくれて、良かったよな」
俺の言葉に、里中が「何言ってんの?」と首を傾げた。
「いや、だってさあ、青葉がいなかったら、俺とか完二は、ぜってーそのままテレビに入ってたじゃん?目の前で菜々子ちゃんが消えて、頭ん中わーってなって、すぐ助けなきゃって思って。でも、それじゃあ、自分らが危なくなって、菜々子ちゃんを助けるどころじゃなかっただろうし。やっぱ、あいつがリーダーじゃないと、上手くいかねーな」
「そうだねー。はっきり言って花村じゃ、全っ然頼りにならないしね」
「ぐぁっ!本人目の前にして、そういうこと言うんか!たく、可愛くねーなー!」
「うっさいわね。男がそんな細かいこと、気にするんじゃないわよ」
「全然細かくねーよ!」
「先輩方ー、痴話喧嘩はそれくらいにして、エレベーター来ましたよ?」
りせの言葉に、二人同時に、
『痴話喧嘩じゃない!!』
「・・・とにかく、家電売場に急ぎましょう」
直斗がため息をついて、エレベーターへと乗り込む。
俺達も、慌てて中に入った。
家電売場で、人目がないのを確かめてから、テレビの中へ入る。
目に入ったのは、いつもの場所ではなく、どこかの体育館のような場所。
「な、なんだこれ!?いつの間に、こんなことになっちまったんだ!?」
「やはり、こちらの世界に、何らかの異常が発生したのは明らかですね。急いで、青葉先輩達と合流しましょう」
直斗の言葉に、俺は頷いて、
「ああ、向こうは装備なしだからな。急がねーと、やばいことになって」
その時、ジャージを着た鬼が、ぞろぞろと倉庫らしき扉の中から現れた。
「・・・なんで、鬼がジャージなんだよ」
「ご丁寧に、升まで持ってるんですけど」
里中が指摘した通り、鬼は何故か左手に升を持っている。
りせが、わざとらしい明るい声で、
「なんか、節分みたい。小学生の時、男の先生が鬼の面かぶって、教室に来たことあったし」
「あー、そんなイベントもあったなあ・・・って!うおっ!?何!?」
うっかり小学生の頃の思い出に浸っていたら、突然バラバラと何かが降ってきた。
「何だ!?豆!?」
確認する間もなく、突然豆がバチバチバチ!と弾け出す。
バチバチバチバチバチ!!!
床に落ちてた豆も、連鎖的に弾けだし、体育館に轟音が鳴り響いた。
「くそ!!ポップコーンじゃねえんだぞ!!」
耳を押さえて叫ぶと、直斗が左手にある扉を指さして、
「ここは一旦退きましょう!!向こうまで走って!!」
「分かった!!みんな行くぞ!!」
りせと里中も頷いて、全員で一斉に走り出す。
鬼達が追いかけてくる気配はなかったが、背後でバチバチと立て続けに鳴る音に追い立てられ、全力で体育館を飛び出した。
体育館を飛び出し、校舎へと続く廊下を走る。
やっと音が聞こえなくなったところで足を止め、
「あー・・・酷い目に遭った。りせ、相棒達の居場所、分かるか?」
「待って。今」
りせがペルソナを出そうとした時、突然、足下の影が膨れ上がった。
!?
「危ねぇっ!!」
慌てて手を取ろうとしたけれど、絡みついた影が、りせの体ごと後ろへ飛びすさる。
「花村先輩!助け・・・っ!!」
「この野郎!!りせを返せ!!」
モンキーレンチを手に影に殴りかかるが、捉えたはずの部分はあっさりかき消え、何の手応えもなかった。
それどころか、影は二つに分裂すると、片方がりせを連れ去ろうとする。
「りせちゃん!」
「りせさん!」
里中と直斗も、影を追おうとするが、分裂した影が絡みつき、行く手を遮った。
「この!邪魔すんじゃない!!顔面靴跡の刑にするわよ!!」
「くっ!!こいつら、こっちの攻撃が効かない・・・!」
殴ろうが蹴ろうが撃とうが、影は散っては集まり、絡みついては散る。
「離しなさいよ!!離して!!・・・先輩方!!直斗!!」
「くそっ!!この・・・っ!!りせ!!絶対助けっからな!!」
遠ざかるりせの姿に、そう叫ぶのが精一杯だった。
side:青葉 秋
「はっ!」
気合いとともに降りおろした竹刀が、骨格標本の肩を捉える。
衝撃で砕けちった標本は、そのままかき消えた。
「おらおらー!とっとと成仏しやがれ!!タケミカヅチ!」
「もー!頭にくるクマねー!!キントキドウジ!」
「コノハナサクヤ!」
みんなが当たり前にペルソナを呼ぶ中、俺だけがどうしても失敗してしまう。
何故かを考える間もなく、骨格標本は次々と溢れだしてきた。
「よし!階段まで走れ!!」
手薄になった一角を示して、俺は駆け出す。
三人が階段を駆け上がるのを確認して、防火扉の取っ手を引っ張った。
じりじりとした動きで閉まる扉を無理矢理押して、標本を閉め出す。
中に入り込んでないのを確認してから、俺も階段を駆け上がった。
上りきった先には廊下が面しており、特に何かの気配はない。
周囲に目を配り、どうやら大丈夫そうだと安堵した時、クマが鼻をひくつかせて、
「むむっ、いい匂いがするクマね。これは、カレーの匂いクマ?」
「そういやあ、カレーの匂いがすんな」
「ほんとだ・・・なんか、お腹空いて来ちゃった」
クマと完二の言う通り、どこからかカレーの匂いがしてきて、雪子の言葉に同調するように、ぐぅっと腹が鳴った。
「あー・・・朝、食べたっきりだもんな」
思わず呟くと、クマが両手を上げて、
「センセイ!クマもお腹が空いたクマ!」
作品名:NeverMore4 作家名:シャオ