NeverMore4
「青葉先輩、どこから匂いがしてるのか、探してみましょうや。『武士は喰わねど高楊枝』って言うっしょ?」
・・・・・・・・・は?
「・・・え?」
雪子が戸惑ったように眉をひそめる。
「あー・・・・・・ああ!分かった!『腹が減っては戦は出来ぬ』だろ!」
俺の指摘に、完二は目を丸くして、
「え?そうなんすか?花村先輩から教わったんすけど」
「ヨースケの言うことなんて、信じちゃ駄目クマね」
「マジか!?あの先輩、すっとぼけたこと教えやがって!!」
・・・陽介も陽介だけど、信じる完二も心配だよ。
「まあ、とにかく、匂いの元を探してみよう。このままじゃ、気になって進めないだろ?」
「賛成クマー!」
「よっしゃ!待ってろよカレー!」
クマと完二が先頭に立ち、廊下を突き進んだ。
周囲を警戒しながら探索すると、あっさり目的の場所を見つける。
「『調理室』クマ!ここから匂いがしてるクマよ!!」
「へえ。ここは、学校内で作ってるのか」
『調理室』というプレートがついた両開きの扉を、そっと開けた。
中に気配はなく、奥に巨大な鍋やガス台、洗い場が見える。
「気をつけろよ、クマ。いきなりカレーが降ってきたら、洒落にならないからな」
「ううっ、そんなもったいないこと、クマが許さんクマ!」
四人で手分けして調理室を見て回るが、包丁が飛んできたり、鍋やヤカンが暴れ出すこともなかった。
ほっと肩の力を抜くと、空腹なのが嫌と言うほど意識されてくる。
「これ・・・食べても大丈夫かな」
同じことを考えたのか、雪子がぽつりと言った。
「よし、俺が毒味しますよ!」
どこから探し出してきたのか、完二が皿とスプーンを持って、鍋に向かう。
「あっ!カンジだけずるいクマー!クマも食べたいクマよ!!」
「馬っ鹿、おめー、俺は先輩方が危ない目に遭わないようにだな」
「私も食べる!青葉君は?」
雪子の問いかけに、俺は片目をつぶって、
「ここまできて、食べられないなんて拷問だろ?完二、独り占めは男らしくないぞ」
「なっ!?違うっすよ!!俺は率先して自分の身を」
「ご飯よそうよ。クマ君、お皿出して」
「ユキちゃんによそってもらえるなんて、クマは幸せ者クマー♪」
わーわーきゃーきゃー言いながら、全員でカレーやサラダをよそい、牛乳を取り出した。
「瓶の牛乳って、懐かしいな」
「蓋が上手く開けられなくてこぼす奴とか、いましたよね」
「それって、カンジのことクマかー?」
クマが茶化すと、完二はむっとした顔で、
「あ?俺は、そんな不器用じゃねーよ」
「むしろ、こぼした子の机を拭いてあげたりしてそうだよな」
「うん、そんな気がする。完二君、優しいから」
「ええ!?な、何言ってんすか、先輩!そんなことねーっすよ!」
真っ赤になって慌てる完二に、雪子がくすくす笑う。
「いいじゃないか。優しい男はもてるぞ、完二。優しくて裁縫が得意なんて、完璧だな」
「・・・ったく。もういいっすよ!」
ふてくされてしまった完二に、「ちゃんと野菜も食べろよ」と、サラダを渡した。
作品名:NeverMore4 作家名:シャオ