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その体の重みさえも

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とうとう撃沈したか。
 そう思い、唇に笑みを張り付かせる。手持ち無沙汰に眺めていた本を机に乗せ立ちあがる。ふ、と窓に視線を遣れば降り出した雨は止みそうにない。
 他人が見ればこれがイギリスと信じて貰えそうにないほど、彼は穏やかな視線を異国の青年に注いでいた。

 ちょっとした仕事と、それから交流を兼ねて日本がロンドンにやって来たのは今日の午前中。時差でろくに寝ていないのです、と真顔で言ってイギリスの執務室に入ってきた。丁度昼前で、昼食まで仮眠を取るか、と問えば毅然とした表情で頭を横に振る。
「用件を先に済ませてしまいましょう」
 まだ雨は降っておらず、濡れても居ないのにしっとりと濡れている様に見える濡れ羽色の髪と、青白い顔に引っかかりを覚えた。
 覚えたけれども、結局彼の言う通りに先に仕事を済ませてしまったのは、きっと日本との時間を多く確保したかったからに違いない。言葉の裏を取る、本人曰く八つ橋に包む言い方を好む日本は、イギリスの言わんとしている事をきちんと理解してくれるから一緒に居て楽なのだ。
 自分の性格を改善しようと努力はしてみるのだが、上手い事いった試しはまだ無い。
 日本が持ってきた仕事は貿易の変更点の草案であった。そう、日本がわざわざ此方へ来るほどの仕事ではない。結局向こうのお偉方も、この無表情な青年が可愛いのだろう。
 ざっと目を通し細かい点を確認し合い、イギリスと日本の二人で本格的に纏めようとした所で時計の鐘が昼を告げた。
 殆ど味わっていない様子で(……或いは、意図的に味を認識していなかったのかもしれない)昼食を機械的に完食し、疲れた様子の日本から無理矢理書類を引き剥がした。理由は単純で、受け答えもはっきりとしなかったからである。
 此方に滞在する時間はたっぷりとあるのだから、その中で済ませれば良いのだ。言っても聞かない日本には正直な所辟易したが、頑固な所や生真面目過ぎる所も嫌いではない自分がいる。
「……では、本を読ませてください」
 頭を使っていないと眠りそうになるのです。
作品名:その体の重みさえも 作家名:nkn