今はただ眠りたい
フェリの口からため息にも似た声が漏れた時、ようやくルートの唇が離れる。主導権を奪われて呼吸もままならなかったフェリは、肩を揺らして大きく息をついた。
「隙だらけなのは、お前の方じゃないか」
ルートが笑うと、フェリは不満そうに口をとがらせる。
「……なんか、くやしいな。俺は、監視網を封鎖しないと正面突破できなかったのに」
さっきの眼隠しには、そんな意味があったらしい。ルートは苦笑すると、フェリの頭を抱えたままで身を起こした。
「いや、俺の負けだ。戦線突破ご苦労だったな」
「俺、頑張った?」
フェリを自分の膝の上に座らせて、軽くハグすることで返事に変えた。
「気が張って眠れないと思っていたが、お前がいてくれたら何とかなりそうだ。
……一緒に、いてくれ」
ルートは、「一大決心」くらいの気持ちでそう告げたのだが。フェリの返事は実にあっさりしていた。
「もちろんであります!」
こいつにとっては、あのキスもその程度なんだろう。そう思って苦笑を浮かべたルートは、次の言葉に軽く打ちのめされる。
「ルッツが望むなら、一生でも良いよ!」
「…………おい」
気軽にそんなことを口にするな。俺が本気にしたら、どうするつもりだこいつは。
「いや、とりあえず今夜だけでいい」
え~つれない! と文句をこぼすフェリを伴って、寝室へ向かうルート。
彼がフェリを自らベッドに招いたのは、これが初めてだった。
おわり
時代は多分、1960年代。
練習書きしたキスシーンに前後を加え、推敲したら全体的にソフトになりました。
これでまだ友人同士のつもりなんだから恐れ入る。そんな感じにしたかった。
BLを意識して書いたのは、これが初めてです。多分ぬるいと思うんだ。
こっそり修行します。