安心する場所
そうしてジャンに触れていると、ふいに瞼がふるえてゆっくりと押し上げられる。金色の綺麗な瞳が現れた。
「……じゅり…お…?」
「あ…」
かすれた声と、まだ夢の中を彷徨っているかのような焦点の合っていない瞳。それがジュリオを捉えるとふにゃりと笑った。
「ジャン、さ…」
そんなジャンに見惚れるようにじっと見つめていると、するりとジャンが腕を伸ばしてきた。その手はジュリオの頭に触れると、髪の流れにそってゆっくりと撫でられる。
「どうした、ジュリオ。…怖い夢でも見たか?」
よしよしと幼子をあやす様なジャンに戸惑って、「あ…、ぅ…」と言葉にならない声をジュリオは漏らす。
そんなジュリオにジャンは笑みを深めると、そのままジュリオを引き寄せて胸に閉じ込めた。
ジュリオの頬がジャンの胸板に当たる。
「じゃ、ジャンさ…!」
驚いて顔をあげようとするが、ジャンの腕によってそれは阻まれた。
「よしよしジュリオ、もう怖くねぇぞ〜」
そして、わしゃわしゃと再度頭を撫でられた。いささか乱暴ではあるが、ジュリオはまったく気にならなかった。身体の力を抜くとジャンに身を任せる。
気付けば先程まであんなに不安だった心が、今では幸せで暖かなものに満ちていた。どうしてあんなに不安だったのかわからないほどだ。
…やっぱり、ジャンさんはすごい人だ。
おずおずとジャンの背中に腕を回すと、ぎゅっと抱きついた。それにジャンは「お?」と声を漏らしたが、それ以上は何も言わずにくすくすと笑った。
何を会話するわけでもなく、しばらくそんな穏やかな時間がゆっくりと流れた。そして次第にジュリオの髪を撫でるジャンの手の速度が落ちていき、とうとう動かなくなる。
ジュリオは不思議に思って、少し顔を上げジャンを見る。綺麗な金色の瞳は再び閉じられ、穏やかな寝息が聞こえた。再び眠ってしまったようだ。
ジュリオはジャンの背中に回した腕に少し力を入れ、ぎゅっと抱きつく。
ジャンの胸板に耳を当てると、とくん、とくんとジャンの鼓動が聞こえた。
「ジャン、さんの…音、綺麗…」
その規則正しく鳴るリズムに耳を傾け、聞き入る。とくん、とくんと鳴る音が、ジャンと同じ位置にある自分のそれと重なるようで、まるでジャンと一つになれたような気がした。
「ジャンさん、好き…です…」