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和(ちか)
和(ちか)
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My home1

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My home Ⅱ


目が覚めて時計を確認すると、もう昼近くになっていた。寝坊してしまったようだ。
「おはようございます」
大急ぎで顔を洗い歯を磨いてリビングに行くと、フランシスさんはずっと前から起きていたらしく優雅にソファーでコーヒーを飲んでいた。
「すみません、寝坊してしまいました……」
「別に用事があるわけじゃないんだから気にしないで良いんだよ。
 なんならもう少し寝る?」
「いえ、起きます!」
隣に腰掛けるとそっと頭を撫でてくれるのは嬉しいのだが、フランシスさんの手に撫でられると起きたばかりなのにまた眠くなってしまうのが困りものだ。暫くの間髪を掬うように頭を撫でて、最後にぽんぽんと叩かれた。
「朝食作ってあるんだけど、食べられる?」
「はい!」
そう言って席を立ち、少ししてキッチンからサラダやパンの乗ったお皿を持ってきてついでのように牛乳たっぷりのカフェオレも置いてくれる。
「フランシスさんは?」
「俺はもう食べちゃったんだ、ごめんね」
「いえ、そんな……私が寝坊した所為ですから」
申し訳無さそうな顔にこちらが申し訳なくなってしまって、慌てて料理に手をつけた。何時見ても盛り合わせ方や彩が綺麗だ。味もいつも通りの美味しさで、料理を一口含んで顔を綻ばせた私を見てフランシスさんが笑った。ちょっと恥ずかしいが、美味しい物を食べると幸せになってしまうのは仕方がないことだと思う。
「ゆっくり食べてね、食べ終わったら食後のデザートもあるよ」
「わぁ、楽しみです!」
一体どうやったら普通の家でこんなに美味しく作れるのか不思議になってしまうほどの味の料理を、急いで食べるのは勿体無いのでゆっくりと味わいながら食べている間フランシスさんは隣に座って優しげな目でこちらを見ている。
その瞳に少しの違和感と言うか、落ち着かない感覚を覚えた。何が違うのかは良く分からないが、最近のフランシスさんはよく私をこんな目で見る。それがどんな目なのかと言われると答えられないのだが、兎に角この目で見つめられるとそわそわして頭がぼーっとしてしまうので出来ることなら止めてほしかった。
「ご馳走様でした、今日もとっても美味しかったです」
「はい、お粗末さまでした。
 今日のデザートはシュー・ア・ラ・クレームです」
お菓子職人のフランシスさんの作るお菓子は当然だが美味しい。それに毎日仕事でお菓子を作っていて飽きてしまってもおかしくないのに、休日になると私の為にわざわざお菓子を作ってくれるのだ。こんな良い兄を持って私は本当に幸せものだ。
けれど何故か最近、少し前のように素直に甘えられなくなってしまった。同居し始めたばかりの頃に戻ってしまったかのようだ。まぁ同居し始めた頃甘えられなかったのは嫌がられないか心配だったからで、今は恥ずかしいからと全く理由が違うのだが。
私達は一体どうしてしまったんだろう。
「はい、どうぞー」
「ありがとうございます、いただきます!」
テーブルに置かれた、正式名称シュー・ア・ラ・クレームまたの名をシュークリームを齧る。溢れてくるクリームを零さないように食べていると、指先で口元を拭われた。
「あ、すみません……ありがとうございます」
「どういたしまして。 美味しいかな、菊ちゃんのお口に合うと嬉しいんだけど」
「とっても美味しいです!」
「そっか、じゃあお兄さんにも一口頂戴?」
そう言って口を開けたフランシスさんに齧っていたのとは別のものを差し出すと、何故か頭が後ろに下がる。
「そっちがいいなぁ」
「えっ、でも食べ掛けですよ?」
「いいの。 まぁ、菊ちゃんが嫌ならいいんだけど」
「そんなことないですけど……」
渋々食べ掛けの方を差し出すと、フランシスさんがにっこり笑って口を開けた。私が齧って元の半分ほどになったシュークリームを口に入れ、潰さないようにそっと指で押し込む。その拍子についてしまったクリームを布巾で拭おうと引いた手をがしりと掴まれた。フランシスさんの舌が指の形をなぞる様にしてクリームを舐め取っていく。
「ちょっ、何するんですか!」
「あ、ごめん。 嫌だった……?」
「……そう言うわけじゃないですけど」
どうもフランシスさんにとっては何気ない行為だったらしい。逆に驚いたような顔をされてしまった。兄弟だったらこう言うことをするのが普通なんだろうか。そうなると拒否した自分がおかしかったのかもしれない。自分の兄を意識してしまうなんて、変な奴だと思われてたらどうしよう。
顔を俯かせて視線だけで様子を窺うと、フランシスさんの視線は何故か私の下半身を見ているようだった。ぎょっとして視線を辿ってみると、無意識に握り締めていたらしい先程舐められた指に到達した。ちょっと赤くなっている。
「あっ……!」
手の力を抜いた瞬間、フランシスさんの手にその手をやんわりと包み込まれた。
「考え事、してる?」
深い海のような青の瞳に覗き込まれ、顔がかぁっと熱くなる。なんでこんなに恥ずかしいのかはわからないが、きっと真っ赤になっているに違いないから見られたくない。もしかしたら私は何処かが変になってしまったのかもしれない。それぐらい最近の私はおかしいのだ。
「いいえ! なんでもないです」
「そっか……」
疚しい考えを振り払うために強く否定する。きっとフランシスさんがあんまり格好良過ぎるからこんな風になってしまうに違いない。少し声が大きくなりすぎたのが気になって向かいを見ると、今度はフランシスさんが何かを考えている様子で伏目がちに俯き加減になって淡い溜息を吐いていた。
「フランシスさんこそ、考え事ですか?」
そう茶化すとはっと我に返ったように顔を上げ、髪を掻き揚げて苦笑した。
「人のこと言えないな……今日は気分転換を兼ねて一緒に出かけようか」
「良いですね」
「ついでに夕飯の材料も買ってきて今日の夜ご飯は豪華にしよう」
「はい!」
部屋に駆け込んで箪笥を開けてみたものの、そもそも普段取り立ててお洒落をしないので服を選ぶのには結構時間が掛かる。しかも自分のセンスにも自信がない。
結局ベットにこんもりと服の山を作り上げた割りに選んだのは無難すぎるシャツと短パンだった。柄と短パンの形で精一杯のお洒落感を出してみたが、正直これはどうなんだろう。
「準備できた?」
「はい、いま終わりました。 開いてますので……」
「お邪魔しまーす」
出かける準備を終えたフランシスさんはいつも通り気負いすぎず小奇麗で、センスが良かった。隣に並んだらさぞかしスタイルとセンスの差が目立つことだろう。
「うぅん、可愛いんだけど何かもう一つ……お、その帽子良いんじゃない?」
棚の上に放り出したまますっかり忘れていた可哀相な帽子を叩き、ぽすんと頭に載せられた。
「うん、良いね。 指輪かネックレスも着けてみたら?」
「アクセサリー類ってあんまり持ってないんです」
「じゃあこれ着けなよ」
そう言って自分が着けていた細いシルバーの指輪を私の右手の薬指につけた。
「よし、バッチリだ!」
「ありがとうございます。 でもこれだとフランシスさんが……」
「大丈夫、それが無くてもお兄さんはバッチリ決まってる!」
誇らしげに胸を張られて噴出してしまった。それが普通に事実なので余計におかしい。
「さ、行こうか」

作品名:My home1 作家名:和(ちか)