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ひとりで少年探偵団

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ドイツの朝は、兄を起こすことから始まる。
 朝を苦手とするプロイセンは、誰かが起こさなければいつまでも目覚めようとしない。その為、毎日ドイツが、わざわざ別の建物である上級学年の寮を訪れ、起床を促しているのだ。
 いつまでも子供のように世話を掛けさせるのはどうなのかと思いつつ、ドイツは他人に気付かれないように細心の注意を払いながら、日課を楽しんでいた。
「……今日は少し遅くなったか」
 プロイセンのだらしない寝顔を思い出し、ドイツは眼鏡の反射を使って緩みそうになる表情を隠した。ドイツは生真面目な優等生で通っている為、朝から緩む顔など、誰かに見られるわけにはいかない。
「……っ」
 ドイツは口元を擦って、緩みを整えた。
 プロイセンとドイツの暮らす寮は建物こそ違うが、隣接している為、距離的には然程遠く無い。
 ドイツはきっちり制服を身につけ、より気難しげな印象を与えがちな眼鏡をかけ、プロイセンの在籍する学年の寮の階段を上っていた。
 だが、間が悪いことに、一番会いたくない人物達と、階段の途中で鉢合わせてしまった。
 プロイセンとは特に親しい友人である、フランスとスペインの二人だ。嫌いという訳ではないのだが、どうしても立場的に、ドイツはこの二人が苦手だった。
 ふざけている癖に、妙に観察眼が優れている所や、わざとらしく痛い部分を突いてくる性格の悪さが、生真面目で堅物のドイツとは相容れない。
 その為、プロイセンがこの二人と友人関係を友好に保っているのは、判る気がする。三人が好む空気はとても似ていてるのだ。
 それが、ドイツには羨ましい。
 弟という一番近い場所を得ているのに、友人を羨ましいと思うのは、単純な嫉妬だ。
「おう、ドイツ、またアイツのお守りか?」
「毎日ごくろうさんー」
 朝から賑やかなフランスとスペインに、ドイツは短く挨拶を返した。
「なんやドイツ、朝から難しい顔しとるで?」
 ドイツの顔を覗きこんでくるスペインに対し、フランスは半歩下がった場所で、にやにやと意図の見え難い笑みを浮かべている。
 この二人には、プロイセンをネタにドイツをからかう癖がある。嫉妬心以上に、ドイツが苦手としている原因だった。
 少しでも隙を見せれば、何を言われるかわかったものではない。
「そうや、ドイツ。今日は一限目、自習やからプーちゃんゆっくりでもええでー」
作品名:ひとりで少年探偵団 作家名:エ ム