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さようなら、恒常な日々

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「うん、骨は大丈夫そうだね、氷嚢で冷やしてから軟膏塗ろうか、擦り傷は瘡蓋になってるから、周りだけ消毒するから」
冷凍庫から氷嚢をとりだして、タオルに包んで患部に宛がわれた
そうしているとジュースの途中だろう折原が話しかけてくる

「てゆーかドタチンって怪我するんだねぇ」
「そのあだ名やめろって」
「よし、ちょっと冷やしてて、静雄、君はどう?」

岸谷は氷嚢を宛がうと今度は反対側の平和島の方へ向かった
何を話しているかわからないが、傷のことだろう
ぼーっとしていると平和島とは逆の方からチリチリした視線を感じる
そちらを振り向くと、折原が今にも人が殺せそうな目を平和島に向けていた
なんだ?

確かに仲が悪く、嫌悪の視線を向けているのを遠目でも見たことが何度もあった
しかし、ここまで顔に出ているのは初めて見る
いつもならば、顔は皮肉めいた笑みを浮かべ、目だけ裏切っていたはずだ
日常と違う点は?
平和島が怪我をしている、2人が喧嘩をしていない、それと岸谷が間にいる
そこまで考えておぼろげに理由がわかりだすと声に思考を遮られた

「門田君、青痣はどう?んー、もう大丈夫そうだね。臨也、ちょっと門田君の患部に軟膏塗ってくれない?私は一度鞄を取りに行くから」
「ええー」

何か必要なものがいるのか岸谷が折原に頼むと案の定不満の声
その声だけで平和島がイライラしているのに気付け、お前ら
しかし、岸谷は特に気にすることなく、折原に軟膏を手渡した

「今度夕飯を作りにいく」
「よっし、ドタチン!俺が華麗に完璧に迅速に治療してあげるよ!ありがたく思うんだね!!」
「は?!」
「安穏無事に待っててねー」

まさに鶴の一声
そんなに岸谷の料理が美味しいのか?
だが、それを聞く前にさっさと本人は保健室から去り、ここには俺と折原、平和島の3人だけ
かなり空気が重い・・・

「んー、軟膏塗って、さっきみたいにガーゼでも被せればいいのかな」
「たぶんな」

沈黙
ただそれに尽きる
チクタクと保健室にかかっている時計の針と折原が治療する音しか響かない
早く来てくれないだろうか、岸谷
ぼーっとそう思っていると治療が終わったらしい

「完成!流石俺、見よう見まねでよくやった!」
「おー、サンキューな」

ようやくこの空間から解放される、と一息つく
巻き込まれないうちに早く退散したい

「ハッ、ただ塗って切って貼るだけじゃねえか」

なんということを・・・!
平和島、なんてことを!
さっき岸谷が言ってただろう?安穏無事って!!
穏やかで、事件や事故とかがないこと、っていう意味なんだぞ!?

「それすらもできないシズちゃんには言われてもねえ?どうせ塗り薬も力加減間違えて悪化させそうだしぃ?」
「んなことねえ!悪だくみしかできねえくせによく言うな!クソノミ蟲が!!」
「悪だくみなんてとーんでもない!ただ純粋に人間を愛してるだけさ!シズちゃん以外のね!!それとも何?一人だけ仲間外れで寂しいわけ?!うっわきもっ!」
「そっちこそ気色悪いこというな、この変人!こっちもお前から愛される対象にならなくて清々すらあ!頼まれたってそんな権利いらねー!!」
「俺だっていくらお金を積まれたってシズちゃんを愛したくないね!むしろ新羅に注ぐ!!」
「んだと?!手前の愛なんざ新羅が迷惑だろうが!!即刻破棄しろ!!」
「はあ?!なんでシズちゃんに指図されなきゃいけないんだよ!!俺の自由だろ!」
「あ゛あ?!」

一触即発
そんな緊迫した雰囲気が漂う中
何か言動に引っかかりを覚えるが、今は自分が危険、そして校舎も危険に晒されると戦慄する
が、しかし、ようやく2人を残していった岸谷が戻ってきた

「あれ、また口喧嘩してたのかい?君達も飽きないよねぇ」

あはは、と笑いながら入ってくる岸谷に目を向ける
どうやら岸谷が持ってきたのは自分の鞄らしい
首を傾げていると岸谷は2人の殺気が交差する間をなんなく通り、平和島の隣にバッグを置いた

「臨也、門田君の治療ありがとう、2人とも教室に戻っていいよ」
「どういたしまして!新羅は?」
「今から静雄の治療しないとね、じゃあお大事に、門田君」
「お、おお」

何故かピシッと石のように突っ立っている折原と岸谷の後ろでしっしっどっかいけと手を振っている平和島
まぁ、自分にはもう関係ないだろう
腰を上げて、椅子から立ち上がると制服の裾に違和感
首だけひねって違和感のある場所を見ると折原が引っ張っていた
なんでだ?
疑問を口に出す前に固まっていた折原が口を開く

「・・・俺、ここにいる」
「は?!どっか行けっつてんだろうが!!」
「俺もシズちゃんとは同じ部屋の空気さえ共有したくないけど!君と新羅を2人きりにさせるくらいなら、ココにいる方がましだね!!」
「あー、落ち着いてって。じゃあ、いてもいいけど、カーテンの向こう側にいてくれる?」
「なんで?!」
「流石の静雄も何人にも下着姿なんて見られたくないだろうから」
「・・・下着?」
「うん、臨也のナイフが太ももだからね、ズボン脱がせないと治療できないだろう?」

ぎゃんぎゃんと折原と平和島が口喧嘩していると岸谷が宥めようと妥協案を提案する
たしかに下着姿なんて見たくもないし、見られたくもない
それは折原も同じなのか顔を不快気に顰めている

「わかった、じゃあ終わるまでドタチンとここで話してるよ!」
「は?」

その為か!!
その為に俺の服を掴んで、俺を教室に帰さないようにしてたのか!!折原ぁ!!
唖然としているうちに話がどんどん進んでいく

「え、門田君と?」
「そう!いいよね、ドタチン!」

了承してくれるよね!と言わんばかりの折原の顔といいのかなぁという岸谷の顔、そしてなんだおら的な平和島の顔
その3つの表情に生来の諦め癖がでてしまった

「わかった・・・」
「やったね!ドタチンってばやっさしー!男前!」
「あー、うん、まあいいや。じゃあ治療に入るから」

シャーッとカーテンが閉められ、医療器具の音がする
折原がカーテン越しに平和島を揶揄する声、平和島が折原に怒鳴る声
そんな二人を諌めている岸谷の声と二人を宥める俺の声


ああ、きっとこれが平和な変化のない日常から離れる音だ

臨也からの文句を聞き流しながら、真っ白い天井を眺めて思った


【 こんにちわ、非常識な日々 】
作品名:さようなら、恒常な日々 作家名:灰青