めり誕①
夢見る関係がある。明確な、言葉で言い表せる関係というもの。
家族をすでにやめてしまったアーサーとアルフレッドの間の関係は友人でなく、ましてや恋人などでは決してない。そして敵といってしまうのはアルフレッドもアーサーも哀しかった。
たしかにアーサーを完全に認めてしまうと、自分はいなくなってしまう。けれど、アーサーを拒絶せず、わかりたいと思う気持ちがあって、だから、ようはどこまでアーサーを受けいれるか。それが問題なのだ。
アーサーが自分にとって何であるのか。それがそもそもわからなかった。
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その晩、アーサーはふらー、とまるでどこからか化けてでるように現れた。誕生日おめでとう、としわがれた声でいって、何やらかわいらしいリボンで包装されたプレゼントを手渡す。アルフレッドはそれを受け取ると、なんて馬鹿なんだ、と叫びたくなる衝動をやっと抑えて、彼を部屋に招いた。
「どうしたんだいその顔…。」
今にも死にそうな顔で現れたアーサーに水を与える。それをごくん、と飲み干す姿を見て、背中をさすってやった。彼は少し微笑んで言った。
「悪かった。」
誕生日だったんだろ、お前。とせき込みながら言われた。
「なんでかわからないけど今日はいつまでも遅れることをお前に言いたくなかったんだ。アルはもしかしたら俺なんていなくても楽しくやっているかもしれない。それを思うと何故だか凄く気に入らなくなって電話に伸ばした手が引っこんじまって…。お前きっと笑うから。俺のことなんて待ってない、て言われるのが怖くて哀しくて…寂しかったから。」
アーサーはいつのまにか少し涙目になっている。フランシスたちがいなくて本当によかったと安堵しつつ、今ならきっとこの可哀相でかわいい隣人を抱きしめることが出来るだろうと思った。
どこで、そして何をしてきたのかわからないが、アーサーはすっかり泥臭いいきものになってしまっていた。だのにその臭いは暖かさをそのまま臭いにしたかのような懐かしさをはらんで俺を子供にした。
自分はこの人に育まれ、この人を抱きしめるために生まれた。それでいい。
単純なことなのに上手くいかない。フランシスの言葉を掻き消すように俺は夢中で目の前の人を抱きしめていた。
次の日、アーサーが帰る前に携帯電話の番号を教えようと思う。そして何度も、彼の声がききたい。