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賭け

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「ちょ・・・ちょっとやめましょうよ」
演習が終わり、繰り出した飲み屋で、地元のフットボールチームだという客10人とワイルドギース(セラスを含め)4人は険悪なムードになっていた。

きっかけはよく知らない。
セラスとベルナドットが話をしている間に、一緒に飲みに来ていたリチャードとウォルツがフットボールチームともめだしたのだ。

ベルナドットとセラスが気付いた時には売り言葉に買い言葉。一触即発の状態だった。
気付いた時の二人の反応はそれぞれで、セラスが青ざめたのに対し、ベルナドットは目を光らせて口の端に咥えていたタバコを灰皿にねじ込みカウンター席から立ち上がった。
やる気と見たのか、近くのボックス席二つにまたがって座っていたいかにも屈強そうな数人がたちあがる。リチャードとウォルツもそれをみて、ベルナドットの後ろに立った。

「おいぼうやたち、うちの奴らがどうかしたのか?」
いかにも挑発的な言葉を吐くベルナドットにセラスは青ざめた。
「いやいや、オカマちゃんたちが、俺たちに媚をふるんで。な?」
髪を短くかりこんだ男が仲間たちのほうに顎をそらせると、他の男たちから下卑た笑いが起る。
自分の方からは見えないが、ベルナドットもリチャード・ウォルツも怒りに顔を染めているだろうとセラスは思った。
だが、ほかの二人よりわずかに前に立っていたベルナドットは満面の・・・といっていいくらいの笑顔をたたえていた。そして、右の人差し指で首にまとわりつかせていた三つ編みを後ろへ払いのけ前に出る。
「そいつは・・・・悪かったな!」
言うと同時にベルナドットが放った右の拳は、見事に目の前に立っていた男の顎先へとヒットし、殴られた男はボックス席のテーブルへと叩きつけられた。
男が背中から叩きつけられるものすごい音とグラスやビンがくだける高い音がまじり、一瞬後、シンと静まり返った。セラスが口に手をあて青ざめる前で、ベルナドットは男を殴りつけた拳を二度、三度と振るとかかってこいとばかりに親指を自らの胸にあて2度叩いた。
そこからはもう、ボックス席にいまだ座っていた男たちをも巻き込んでの乱闘騒ぎ。
数では圧倒的に不利ながらも経験で勝るワイルドギースの三人はうまく1対1の状況に持ち込みながら喧嘩をする。
「ちょっと・・・・ベルナドットさん!!!リチャードさん!!!・ウォ・・・ウォルツさーーーーん」
いくらセラスが頭に血の上った3人を振り向かせることはもはや不可能だった。
そこかしこでビンがとび、テーブルが倒れ、人が飛ぶ。
ほかの客たちが恐々として逃げ帰る中、セラス、そしてその店のオーナー店長であろう頭のはげた恰幅のよい親父、それに若いバーテンの二人は立ちすくんだ。

-こりゃだめだわ・・・・-

セラスは頭を2・3度ぶんぶんと振ると、カウンター席に座りなおした。
そして、さきほどまでベルナドットが飲んでいた酒を自らのグラスにそそぐと一気にあおる。
まずくもなんともない。
アルコールに強いといわけではなく、セラスには何の味もしなかった。
ただ不思議と、胃の中がカッとあつくなった気がする。
背後の喧騒をBGMに3杯を一気にあおったとき、隣から声をかけられた。
「やぁ、お嬢さんこんばんわ」
おそらく、フットボールチームの一人だろうが、背丈はさほど高くはなく体格もさしてよくはない、顔はととのっていてどちらかというと優男といった雰囲気の男が立っていた。
この人も、私と同じく、後ろの喧騒にあきれた一人なのだろうかとセラスは思った。
「こんばんわ」
「座っても?」
「えぇ・・・どうぞ」
紳士的なふるまいにセラスは隣に座ることをゆるした。
「ところで・・・あの3人のうちの誰かが彼氏なの?例えば、あの三つ編みの男とか?」
男が振り返り、親指でさすほうをみるとベルナドットはテーブルの上にたち、一人の男を相手に拳を振るっていた。テーブルがせいぜい二人しか乗れないことを考えると、人数で不利なワイルドギースとしては良い戦法だといえた。だからといって、セラスが感心するわけではない。
「まさか。そんなわけないじゃないですか」
セラスが不機嫌に応じると、優男がにこやかに微笑んだ。
「じゃぁ、あのオカマちゃんたちがへばったらこっちと一緒に飲みなおさないか?」

-オカマちゃんたち・・・?-

さっきまでの優男の紳士ぶりとはうってかわり、ナンパにかかり、なおかつ3人を馬鹿にする態度にセラスはむっとした。
セラスが黙っていると、男が話しを続ける。
「それにしても、結構あのオカマちゃんたちタフだねぇ」
プチンと何かがセラスの中で切れた。
「私・・・・隊長さんはともかく。リチャードさんやウォルツさんをオカマ扱いするのは許せません!
 謝って下さい!!!」
セラスが屹と睨むと男は面白そうにセラスの顔を眺めた。
「じゃぁ、あの3人が勝ったら謝るよ。ただし、俺たちが勝てば君は今夜は俺たちと飲む。これでどう?」
「・・・・もう一つ。ここの備品の修理代も出してください」
男の目が底意地悪く光った。
「お安い御用で」
負けるわけがないと高をくくっている態度にセラスがいらいらとする。
セラスが睨むと、男は立ち上がり後ろを振り向いた。
「聞いてくれ!たった今、賭けが成立した。
 俺たちが勝てば今夜はこのお嬢さんが、俺たちのおもちゃになってくれるぞ!」
声を張り上げる優男に、男たちは動きをとめ、言葉を聴き終わるといっせいに歓声を上げた。
それとは反対にベルナドットたちの顔色が曇った。
ベルナドットはすばやく男たちの間をすり抜けセラスに寄る。
「おい、セラス!馬鹿な約束するなよ。」
「自信ないんですか?」
さっきの男への怒りをそのままベルナドットに叩きつけるように睨むと、ベルナドットの腰が少しひけた。
「いや・・・負けはしない。しないぞ。
 だけどな相手の数は倍以上だし、リチャードやウォルツは体術向きじゃないのしってるだろ?」
確かに、二人ともワイルドギースの中では細身で、どちらかというとスナイパータイプなのだ。
だけど、この言い分だとまけるといってるようなものではないか。
セラスはイライラと下唇を噛んだ。
「早くはじめようぜ!」
はやし立てる男たち。そしてセラスに下品な言葉を浴びせかける。
普段なら“セクハラ!”といって騒ぎ立てるセラスも、今夜は本当に頭にきていた。
ベルナドットを押しのけ、男たちの前に一歩踏み出した。
「ただし!あなたたちがまけたら全員、土下座ですからね!
 それに、このお店の弁償もしてもらいますからね!」
どっと笑いがおこった。誰もセラスたちの方が勝つとはおもっていない。それがまたセラスには面白くない。
セラスは歯をギリッと噛み締めると、もう一度口を開いた。

「それと・・・私も参戦します!」

セラスの宣言に彼らの盛り上がりは最高潮に達した。
喧嘩にかこつけて寝技に持ち込むのが彼らの狙いだろう。
反対にベルナドットら3人の顔は青ざめて、リチャードやウォルツも走りよってきた。
彼女が屈強な男たちにいいように遊ばれるのを恐れたわけではない。
むしろ、逆。
フットボールチームのメンバーを心配している。
「おい、セラス。考え直せよ」
「そうですよ。俺たちに任せてください」
作品名:賭け 作家名:あみれもん