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whimsical love

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その僅か30分後、俺たちはいつも通りのバイオレンスな喧嘩を繰り広げることとなる。

だってさぁ。
クッキーに入れる砂糖を塩と間違えるなんて、ベタで可愛いミスでしょ?

しかも、そんな初歩的失敗をやらかしたのがこの天下の折原臨也だよ? 自分で言うのも何だけど、可愛すぎるでしょ。優しく慰めるべきだよね。

いや、無理に笑って「おいしいよ」とか言えとまでは要求しない。
「普段料理しないのに、頑張ったんだな」って頭を撫でてくれとまでも、言わない。

でもさ、真顔で「お前やっぱ、毒入れただろ」はさすがに無いと思うんだよねぇ、シズちゃん。

そういうわけで、少なからず機嫌を損ねた俺の売り言葉にシズちゃんが買い言葉で応じ、それが続いた結果、シズちゃんがキレた。いつも通り。

「死ねノミ蟲! 二度と池袋には来んじゃねぇぞ!!!」
「行くわけないでしょ。帰りたいならさっさと帰れば? ていうか帰れ」
シズちゃんは一暴れした後で足音も荒く出て行った。俺もナイフを投げつけて見送ってやった。


俺はさっきまで座っていた椅子の上で膝を抱え込み、盛大に溜め息を吐く。ちなみにテーブルは脚が2本折れて横倒しになっている。鍋は隅の方に転がっていた。シズちゃんがぶん投げたのだ。

ああもう、さっきあれだけ俺を翻弄させておいて、ほんの10数分前にあれだけ俺をノックアウトさせておいて、何なんだこの有り様は。
大体、何でこういう可愛い失敗にはデレてくれないんだ。しかも、何でキレた決め手の一言が「シズちゃんの巨神兵」なんだ。何か嫌な思い出でもあるのか。
……もう本当、あの男は分からない。こっちはこのままお泊りに持ち込む作戦を練り始めてたのに。

腹立ち紛れに、一人で「シズちゃんの馬鹿」と呟く。
もう、今すぐ寝てしまいたい。片付けは明日にしよう。

何だか今日は、すごく疲れた。

そこまで考えてから天井を見上げ―――俺は、少しだけ微笑んだ。

……まぁ、本日のバレンタイン計画における最重要ミッションはクリア出来たわけだから、良しとするか。
作品名:whimsical love 作家名:あずき