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キミに愛を、キミの名に祝福を

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「俺が祈ってるよ」
「……ぇ?」
「ポーが幸せになるように、幸福でありますように、って。俺が、思ってる」
「リト」
「だって、俺たちは、国である以上に、俺たちなんだから」

 机の上に置いた俺の手に、リトが触れる。
 手の甲を上から包むように握ると、リトは、その力を少しだけ強めた。


「それにね、ポーランド。俺はやっぱり、俺たちの名前も、神様がくれたんだと思うよ。だって、洗礼名もそうじゃない。神様の祝福を得てもらい受ける名前だよね」
「……ん……」
「人間も、俺たち国も、神様から与えられた名前があって。神様から願われた祝福があって、それを祝うのが、名前の日でしょ?」
「……ん」
「ポーランドに幸せになって欲しいって願いが、ポーに名前を与えたんだと俺は思うよ」

 幸せに。
 リトに言われた言葉に、胸がぎゅうと熱くなる。
 幸せになって欲しいという願い。
 それが、俺そのものに、願われて与えられた思いなら。
 俺たちが出会えて、ひとつの国になり、分かれて。
 あの雪の日に一度消えた俺が、いまもう一度ここに生きて、リトとこうして手をつないでいられるのが、
 幸福であれと願う、誰かの思いなのならば。

 もう一度生まれてこれて、もう一度リトと会えて、
 この名前が幸福を導いてくれたなら、
 俺の持つ名前は、なんて、意味深いものなんだろう。

「フェリクス。幸運の名は、お前にふさわしいと思うよ、ポーランド」
「……リト」
「だって俺、ポーと一緒にいるの、幸せだと思うから」
 リトはそう言って、すごく優しく、幸せそうに笑って、俺を見て。
 そういうリトの方が、よっぽど幸福そうだ。


「生まれてきてくれてありがとう、ポーランド。俺、ポーと出会えて、幸せだよ」
「……リト」


 生まれてきて、名前を与えられて、こうしていま生きて。
 その中で、俺たちが国でありながら国である以上の感情を持って、こうして生きていることは、なんて尊いんだろう。

 人間の子が、両親と神から祝福を受けて生まれ育ち、幸せになっていくように、
 俺たちの存在にも、幸せになる意味が、あるのなら。



「俺、いま、すごい幸せだし」
 こぼれだしそうになった涙を抑えて、リトの手を握り返す。
 触れ合った手のひらのぬくもりが、リトの優しさそのものみたいで、やっぱりちょっと笑った。


 出会えてよかった。生まれてこれてよかった。
 そう思える「今」があることが、もう俺にとって、幸せそのものだ。


 フェリクス。
 幸運の意味を持つ名前、フェリクス。
 俺に与えられた祝福が、その名前が、「俺」に願われた誰かの祈りなら。


 俺、ちゃんと、幸せかみ締めなきゃいかんね。



「ハッピーネームディ、フェリクス」

 リトが笑う。
 俺も、なんかちょっとおかしくて笑った。
 ハッピーネームディ、フェリクス。
 俺と同じ名前を持つすべての人に、今日という日に、幸運の祝福を。


END