手
この鎖は彼を一生、"罪"という形で縛るだろう。
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あの男を手にかけた時、
迷いはなかった。
動揺も恐怖も、後悔すらなかった……。
自分が何をするのか、分かっていた。
それを受け入れる覚悟、背負っていく覚悟も出来ていた。
…だけど………
一つだけ………
『……穢い』
これがあの時唯一、あの場で嫌悪を抱いたこと。
服に付いた血なんかよりも、洗えば落ちるはずの手に付いた方の血の方が、
嫌で嫌で仕方がなかった。
(汚れたことその物が、嫌だった訳じゃない。)
本当に嫌なのは、
本当に嫌なのは……
(この手で、彼女に触れる事が出来ない事……)
それが何よりも辛くて、悲しくて、嫌だった…。
でもこれからはこの"罪"を受け入れて、生きていかなければならない。
逃げるなんて許されない。
"解放"なんて言葉はないだろう。
(これがオレに与えられた罰……)
そう……
───彼女に触れる事が、出来ないという事───
end.