天空のロスト 紅桜編
「俺ら、コナンファンなんですよぉ!そうとわかったら、こちらへどうぞ~!二名様、ごあんな~い!」なんていきなり調子がよくなった銀髪はそう言いながら俺たちを花見の席へと案内していった。
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「実は俺たち事件に巻き込まれてしまって…。
犯人がコナン(この人です、と指をさす)を飛行船から突き落としてしまい、自分が助けようと追って落ちたところが此処だったんです」
「おい、事件て、攘夷派のテロか?」
すごい瞳孔の開いた眼を土方さん?から向けられその恐ろしさに一瞬たじろぎつつ
「は?あの、攘夷派って…。幕末じゃあるまいし…?」
「いやいや、土方くん」と銀髪がフォローする。
「このお二人はたぶん、名探偵銀さんが推理するとだね(キラリーンと俺の方へ目をむける)
え~、コホン。「名探偵コナン」という番組のキャラクターだ」
「おめ、全然推理でもなんでもねぇだろが。
さっきコイツがそう言ってたじゃねぇか」
「シャラップ!慌てるんじゃありません。つまり、この人たちは「名探偵コナン」の世界の人だから銀魂の人たちじゃない、つまり異世界から来た人たちってことなんだよ」
異世界…。たしかに…。珍妙な服装に、珍妙なあまんと、という生物。
たしかにそうかもしれない。
「どうしたら、帰れるんだ…」
ぽつり、コナンが溜息混じりに零す。
いつの間にかコナンは目を覚ましていたらしく、大きくひとつ伸びをして上体を起こした。
「コナン、目が覚めてよかった。どこか痛いところは?」
「いや、大丈夫だ」
「しかし一体ここは…」と俺を見上げた。
俺もわからないというゼスチャーをする。
「まぁ、あれだな」
土方さんが、煙草に火をつけ一つ吸ってから続けた。
「とりあえず、帰れるまで万事屋にいるしかねぇだろ」
そういうと少年と神楽ちゃん?はキラキラと目を輝かし
「さっそく探偵団作ろう!歌舞伎町探偵団とかよくね?」と話し合いだした。
しかし銀髪(恐らく万事屋の人)は
「え、そしたら土方くんと二人きりになれないじゃん」と不貞腐れた口調で土方さんを上目遣いに見遣った。
「おめぇのとこのガキが拾ってきたんだからちゃんと世話しろ。俺だって忙しいんだ」
んん?この二人ってもしや…?ついじろじろ二人を見比べる。
土方さんがちょっと頬を紅くそめる。男なのに中性的な美人だなぁ…。特に瞳が印象的だ。不思議な色を湛えている。思わず吸い込まれそうだ。
視線を感じ眼を下に落とすとコナンがじっと俺を見つめ、否睨んでいた。
えぇッw ちょっと見てただけなのに何で睨んでんの?!
やばいw 勿論、俺はコナン(新一)一筋ですよぉ~!とありったけの気持ちをこめてにっこりとコナンへ微笑む。
コナンはそれでも疑わしげに俺を見る。そんなに俺デレっとしてないよ。
するといきなり銀髪が今までで一番大きく通る声で宣った。
「言っとくけど」
「「土方くんは俺のモノだから絶対に手出さないでね!」」と釘を刺されてしまった。
…言われなくても。
「もちろん!
俺はこの…」
と言ったところでコナンから思い切り脛を捻られる。
代わりにコナンが後を続ける。
「暫くの間、お世話になります。よろしくお願いします」礼儀正しく頭を下げる。
と銀髪は「あ、あぁ…」とダルそうに頭を搔き返事をした。
ふと、桜に目を移し疑問を口にする。
「ここの桜って色が濃いですね」
「この桜は紅桜って言って、ちょっと濃い色なんだ」
と、銀髪が説明してくれた。
「そうなんですか。きれいな色ですね」
というと満足げに銀髪は頷いた。
俺は、とにかく、コナン、新一といっしょなら、いい。どこでも。とにかくいっしょにいられれば。
いつ、帰れるかまだわからない。
でも、二人一緒なら…。絶対大丈夫。
俺はそっとコナンの手を握り、力を込めた。
紅桜がそれに応えるかのようにさらさらと花びらが舞ったのだった。
一応おわり。続くかも?
作品名:天空のロスト 紅桜編 作家名:森永 マミィ