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みとなんこ@紺
みとなんこ@紺
novelistID. 6351
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recollection

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珍しい事に、結構早い時間に遊戯はぱっちりと目を覚ました。
全然余裕でいつもの時間より一時間以上早い。
珍しい、と自分でも思いながら身体を起こすと、遊戯は一つ大きく伸びをした。
と。机の上に目がいって、途端昨日の事を思い出す。
広げっぱなしにしていたはずの教科書やノートはちゃんと一纏めにされていて、その上にちょん、と置かれた自分の携帯。
そっと、それを手に取ってみる。

留守電の表示。

履歴を見てみて、僅かに目を見開く。
…公衆電話からだった。

センターにつなげて、再生を。



『――――相棒?』



「・・・!!」

一瞬、呼吸を忘れた。
耳障りな機械音声の後に、耳元に囁くような、呼びかけるような、彼の強い声が。

いつもみたいに直接じゃなく、機械を通して届けられる声。
デジタル化され、残された、彼がそこに在る証に、ただ胸が詰まった。
言葉もなく、自分の体温が移りかけた小さな機械越しの声に、ただ耳を傾ける。
――――心を傾ける。それだけ。



「・・・反則だよ、もう一人のボク・・・」

今度は昨日とは違う意味でこみ上げてくる感情を抑えられない。・・・きっと鏡を見れば、ユデダコみたいになっているに違いない。
・・・人の感情は相反するはずの複数の感情を同時に感じる事が出来るという複雑な面も持っている。それをまざまざと突きつけられて、遊戯は携帯を手にしたまま、かっくりと膝を折った。


今度は倒れるほど恥ずかしいけど、…嬉しい。

コレだ。


遊戯はのろのろと顔を上げた。
部屋の隅に掛かっている鏡を見ると、やはり顔が赤い。
・・・学校に行くまでに治まってくれるだろうか。
それより、もうすぐ自分を起こしに来るだろう、もう一人の遊戯にどんな顔で会えと。
こんな状態を見られたら、彼はきっとトラップカードに対戦者を引っ掛けた時のような、悪戯が成功した子供のような表情で笑うだろう。
そして記録されてしまった言葉の一欠片を、もう一度言うんだ。

『――――自分だけだと思わない方がいいぜ、相棒』

同じだ、と告げられた言葉の意味をどうとって良いのか。

昨日寝てる間にされたアレは何だったの、とか。

色々ぶつけたい疑問は尽きなかったが、とりあえず遊戯がまず先にしたことは留守電の保存。
今度から、間違えて消してしまわないように留守電の扱いは非常に気を遣う事になるだろう。
・・・なんだか本当に恥ずかしい事をしているような気もしたが、とりあえず遊戯は見ないふりをする事にした。



消すに消せなくなったそれを誰にも内緒で持ってる、
そんな2人だけの秘密の記憶が今日もまた一つ。



作品名:recollection 作家名:みとなんこ@紺