ダランベール
赤林は楽しそうに笑う杏里を珍しそうに見つめた。
杏里の友達なのだろうと思ったが、制服が違うことに気づいた。
そこで赤林は違和感に気づいた。
杏里と帝人を交互に見、二人の不思議そうな視線を感じつつ、赤林は何往復した後に気づいた。
「あれ、お嬢ちゃん、男?」
「え、あ、」
「あ、赤林さん、私のために来てくれた竜ヶ峰君です」
「へー。ここ女の子しか入れない店だからね」
「でも、あ、赤林さんが来たから意味なかったていうか・・・」
帝人は少し杏里側に近づき、赤林の視線から逃れたかったが、赤林はにこにこと笑って帝人を褒める。
「いやぁ、そんなことないよ。おいちゃんだってたまたまあのタイミングで来ただけで、竜ヶ峰君がいたから杏里ちゃんもこうして無事だったんだよ」
「あの、なんで分かったんですか?」
「ああ、それはここだよねぇ」
赤林は自分の首を指して見せた。
「全体の雰囲気は女の子だけど、よく見ると分かるよ。まあ、スカートはいて、それらしければバレないものだねぇ」
「竜ヶ峰君おかしくないです」
「園原さん!それ以上はいいいよ!」
「あはは!男の名誉に関わるよねぇ」
「?」
杏里が不思議そうに首を傾げる。
赤林は笑いながら帝人の頭を撫でた。
「ありがとねぇ」
「?」
帝人はよく分からなかったが、とりあえず頷いた。
赤林は杏里の頭も撫で、「じゃあねぇ」と言って、去って行った。
入れ違いに門田達がやって来る。
「そう言えば、何かされた?」
「いえ、正直、私には彼らが何を言ってるのか理解できなくて」
「そっか」
「あの、助かりました。ありがとうございます」
「僕が勝手にしたことだから」
頭を下げて礼を言う杏里に、帝人は恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。
照れ臭いのもあった。
その時ちょうど、門田と狩沢がやって来た。
「おい、大丈夫か?」
「あー!杏里ちゃん無事?」
狩沢が杏里に飛びつき抱きしめ、門田が心配そうに帝人の側にやって来た。
「助かりました」
苦笑気味で言う帝人に門田は疑問符を出しながらも、「そうか」と応えた。