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夜があけるまえに

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そういったわけでわたしは眠れないのです。
昼間にコーヒーをたくさん飲んだからでも、漁に行かなかったから体が疲れているわけでもなく、ただひとりの存在の大きさによって眠れないんです。くらやみのなかで、何回か瞬きをしてみました。だけども見えるのは、暗さに慣れてみえる、天井の色ばかりです。目をとじてみても、見えるものは、じぶんのまぶたの裏しかなくて、どうにも意識が消えないのでわたしはさっきから、バストを大きくする運動をしてみたり、むずかしい本を読んだりしているんですけれど、やっぱり効果はないみたいで溜息がでてしまいました。

今日はとつぜんの訪問だったので、めずらしいこともあるもんだなあとわたしは慌ててぼさぼさだった髪をとかして彼を向かい入れました。キングオブザフェミニストなので、たいてい来るときは連絡をくれるのになあ。さらにめずらしいことに、なんと彼の肌につやがなかったのです。肌だけじゃなくて、髪もなんだか傷んでいるし、目の下に隈もあります。美に関してあんなにうるさいひとがどういうことでしょうか!

わたしはすっかりびっくりしてしまって、心配で心配でしょうがなく、彼のすがたをみているとじいいんと胸のおくが苦しくなってしまいました。弱弱しく笑う彼をとりあえずソファに座らせて、わたしはわたわたとコーヒーを淹れにいきました。こういうことは彼のほうがうまいのですけど、でも今日はそんな元気すらないようです。そういや軽口すら叩かれていないや。



「あの、なにかあったんですか?」

そっとコーヒーをテーブルにおきながら、依然憔悴している彼に尋ねたら、また弱弱しく笑います。ウィもノンも言わないのでますます胸がいたくなってしまってしょうがない。わたしはそっと、彼の隣にすわって、すこしぱさついている、彼の金色の髪にふれます。むかし、あなたがよく、してくれたこと。いいこいいこと口にはしないけれど、呟きながら撫でていたら、セーシェルはいいこに育ったねえと、ようやくいつもらしい口調で話しかけられたので、少しほっとしました。

「突然ごめんね」
「いいんです」
「びっくりしたでしょ」
「訪問よりも、そのすがたにびっくりしました」
「そうだねえ、お兄さん普段おんなのこの前にでるときはちゃんとするからねえ」
作品名:夜があけるまえに 作家名:萩子