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303号室の食卓

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 朝目覚めて最初にすること。
 カーテンを開けて部屋の中に陽光を取り入れること。


 次にすること。
 サンダルをつっかけてベランダで盛大な伸びをすること。


 その次にすること。


 「おはようございます」
 「・・・・ぉー・・・・」
 「今日は目玉焼きと、新米が届いたのでご飯もこっちで出します」
 「目玉焼き俺ソースな」
 「はいはい。あ、お味噌汁ありますけど」
 「あー・・・米なら汁もん欲しいな。喉が、」


 「ただし牛乳は持参」


 「・・・・・わかってるよ」
 「あとお弁当の玉子焼きどうします?甘くするか出し巻きにするか」
 「出し巻き」
 「じゃあ薄口醤油も持参してくださいね」
 「・・・・お前いい加減醤油買えよ」



 隣人と(何故か)朝食のメニューの相談をすること。











303号室の食卓










 どうしてこうなった。
と、考えることをやめたのは、もう随分前のことのように思う。
 それより、と時計の秒針に追われながらてきぱきとワイシャツに袖を通す、帝人の頭の中を今一番占めていることは、何を隠そう、朝食に使う卵のことだ。


 朝食の目玉焼きに2個、お弁当に2個・・・もしかしたら3個。
 タイムセールの10個パックを買ったのはもう随分前のことなのでなんだか心許ない。場合によっては卵も持参して貰わねばなるまい・・・なんて思いながら、ネクタイを締めて台所に向かう姿はまるで主夫だ。エプロンの紐がずれ落ちるのも気にせずに、毎朝きっちり同じ時間に弁当を持たせて送り出してくれた遠い異国にいるであろう母親に通ずるものがある。


 「あ、いけそう」


 母も毎朝こうして冷蔵庫の中身を確認していたのかな、などと思いつつ手早く調理器具の準備をする。
 朝食より先にお弁当の中身に取り掛かるのは、隣人の二度寝を見越してのことだ。




 朝起きる→ベランダで一服→洗顔と歯磨き→着替え→ソファでまったり・・・・のまったりが、彼にとっては十分な睡眠時間になっているので、早く作りすぎると冷や飯を出す羽目になる。 自分が悪いのに「・・・冷めてる」とぼそっと責められるのが嫌で、ここ最近はインターフォンが鳴る前に卵を焼くことはやめていた。


 と言っても、インターフォンが鳴るまでに然程余裕はないので、ボールに卵を割ったところでタイムリミットまであと20分。
 昨日の残りと出来合いのおかずをお弁当箱二つに詰め終わったところであと15分。
 机に皿とお茶碗とコップを並べたところであと10分、



ピンポーン♪



あるはずが、どういうわけだか今日はいつもより早くインターフォンが鳴った。流石に鍵は渡していないので、いそいそと玄関に出迎えに行く。

「・・・うす」

 ガチャリ、と多少大げさな音を立てて開いた扉の向こうに、見慣れたバーテン服と金髪。ライオンのようだ、と例えたのが嘘のようにとろけた目蓋が面白くて笑うと、あ?と唸るその声は寝起きのためか少し掠れている。


 出会った当初だったらこれだけでびびってたんだろうなと思うのだけれど、いつの間にかそういう時期を通り過ぎてしまった身には、控えめに弾けたデコピンが痛い。
 でもそれより、随分仲良くなれたなーなんてのほほんと思う自分が痒いのは気のせいじゃないだろう。それはもう非常に嘆かわしいことに、男二人で仲良しこよし、一人暮らしなのか同棲なのかわからなくなるレベルには、お互いの生活の中に溶け込んでいる自信がある。多分向こうも。



 「おはようございます、今日ちょっと早いですね」
 「あー・・・いや、薄口醤油いるんだろ?だから」
 「あ、そっか。どうぞじゃあ、上がって待ってて下さい」
 「ん。5分な」
 「・・・・・・・10分」
 「5分でできるだろ」
 「できませんよ。そういうことは手伝ってから言ってください」
 「・・・牛乳注ぐし」
 「それ自分の分だけでしょ!」



 クイと持ち上げられた薄口醤油のボトルを受け取って、軽口を叩きながら歩き慣れ足取りでリビングへ向かう背中を追う。・・・まぁ、歩き慣れたっていうか同じ間取りなんですけども。
 いそいそと再び朝食の準備に取り掛かる自分を他所に、本当に自分の分だけコップに牛乳を注いでテレビの前に鎮座したバーテン服が憎たらしい。その上、それ以上身長伸ばしてどうするんですか。思わず出た恨み言に、じゃあお前にやると差し出されたコップの忌々しさったらない。いっつも思うんですけど静雄さんて僕の地雷踏むの上手いですよね^^^^
 ニッコリ笑ったのに無視された。心外。


作品名:303号室の食卓 作家名:キリカ