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Kサト七夕小説

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  ――鳥が、飛び立った


バサバサバサッ……。

(あれ――…?)

夕暮れ帰宅時間のこと。
サトウが会社駐輪場に留めてあった自転車に乗ろうとすると、近く細長い電柱から何か羽ばたく音が聞こえた。
視線を巡らせ、音の出どころを探るとすぐに、ああ、と納得した。
見ると雀や鳩が翼を広げ、空へと飛び立って行った。
今は夕暮れ時でもある。我先にとばかりに急ぐ様子は、きっとこの子達も自分の家へと向かおうとしているのだろうとわかった。なんとなく温かな気持ちになって、知らず顔を緩ませた。



  ――夜が訪れる



さて――、と見送ったサトウは、自分も家へと帰るため、自転車を走らせた。
そろそろ辺りが暗くなる。夕暮れオレンジから宵闇の深い色に。赤、オレンジ紫、そして闇色へ。綺麗なグラデーションは芸術的で、サトウの目を楽しませる。
でも同時に物悲しさも漂わせる。明るさが闇に包まれ、自分の存在さえ飲まれそうになると思ったのだ。なんとも言えない焦燥感が身を焦がすようだった。


そのまま走らせていると、ふと、馴染んだ香りが届いた。あれ…?と見回すと、
「あ…」
「…ん?」

そこには、

「KKさん…っ!!」
「よお、サトウ」



たまたま運良く鉢合わせた二人。思ってもいなかった遭遇に、サトウは驚いた。
一緒に帰る約束も、特に待ち合わせ場所も決めていないにも関わらず、顔を合わせることが出来たのはちょっとした奇跡。黄昏時にお互いの顔も解かるなんて…。運命的…とも思ってしまう。

サトウは乗っていた自転車を降り、KKへと近づいていく。チリチリチリ――…とチェーンが回る音がする。ハンドル前に取り付けられているカゴには勿論ししゃもがいた。ころりと丸まり、気持ち良さそうに寝息をたてていた。
KKの方は常に持ち合わせている煙草の他は持ち合わせていないようだ。何時ものこざっぱりした身なりに目深に被った帽子。珍しく商売道具のモップとバケツはその手にはなかった。

顔を合わせた途端、互いに相好を崩す。
「お疲れ様です、KKさん」
「ああ、お前もな」
「今日のお仕事もう終わりですか…?」
「ああ、今日の分は終わらせた。そのまま帰れる。――帰るぞ」
「あ、はい!」
簡単なやりとりだが、優しい声と穏やかな顔に今日一日の疲れがとれるようだった。言葉端から感じ取られる相手をいたわる響きがあってこそのこと。互いが互いを癒やしになっているのだ。
単純なことだが、それが嬉しいと両者共に感じていた。

二人足を前へと進ませる。

「腹減ったな」
「今日はこの前特売してた牛肉と冷蔵庫にあるじゃがいもを使って肉じゃがにしようと思うんですけど…」
先週スーパーで安売りしていたものだ。
「お、うまそうじゃねえか」
「じゃあそれに決まりですね」
本日の夕食メニューも決まり、サトウは調理手順を頭の中で組みながら歩を進める。
「前に買い置きしてたビールで楽しむのもいいな」
「もうKKさん、ご飯もちゃんと食べて下さいよ」
KKの言葉を聞きとがめ、むうと頬を膨らませるサトウ。KKは悪びれるように苦笑して、悪ィと洩らした。


と、いうのも、KKはついサトウが作る献立を全てがテーブルに並べられる前につまんでしまうのだ。試食というには生易しい程度ではない。先に作られ、テーブル真ん中を陣取っているメインディッシュを前にして、仕事で疲れ、くつろいでいたKKの腹のムシを大いに刺激した。黙ることは当然ムリというもので。更にサトウの手腕で作られた食事はかなり食欲をそそるイイ匂いを漂わせ、部屋の外にまでわかるくらいだ。…KKでなくても手を伸ばしても仕方ないものだった。夕食準備にと忙しいサトウは背後で起こっている狼藉に気付くことがなく、最後に淹れられた味噌汁を運んできた時に気づいたときは既に半分以上姿を消してしまっている本日のメインデッシュが目に映ったのだった。しかもそれだけでなく、KKの隣には一つに纏められたビールの空き缶が数個転がっていた。
あまりのことに呆れて言葉もないというが、それは数瞬のことで、次には盛大なサトウの小言が繰り広げられた。これでは夕食…というより酒のつまみになってしまっている。それにサトウはお冠である。これでご飯も食べてくれたらまだ文句も少ないのだが、ビールの炭酸は思いの外満腹にしてくれるようで、手がつけられていない。手付かずの茶碗を見つけた時、むむっと眉間に皺をよらせた。

しかし、アルコールで気持ち良くなってる人間に説教なんてどこ吹く風。のらくらとかわされ、まともな意見すら聞き入れてくれるわけがなかった。これでは叱り損と気付いたサトウははあ~と大きくため息をつき、今度はビシッ!と言おうと決心して自らもまた食事を取り始めるのだった。…未だにそれは遂行される気配がないのもまた事実、である。

ともかく、夕飯を酒のつまみがわりにされることが多いことにサトウはおもしろくないと思っているのだ。
「ぁー…、ついビールに走りがちになるんだよな」
KKとしては自分の悪グセはわかっているのだが、つい治すことができない。サトウはちゃんと栄養バランスも考えているとはわかっているにも関わらず、だ。
つい、サトウの手放しの優しさに甘えるのが心地よい。自分だけの特権。当然な感じになってきてるのかもしれない。
――本当はそんなこといけない、ってわかってるはずなのにな。自らの立場を考えると、いずれは――…。

どこか自嘲気味に小声で零したKKに、幸いなことに辺りが暗いせいでサトウが気付くことはなかった。

「お前の作るおかずが美味ぇし、それだけで十分だと思っちまうんだよな」
…思わぬ不意打ちに、サトウはポンと顔を赤らめる。
そんな殺し文句を言われたらぐうの音もでないではないか。
「ご、ご飯そんなにたくさん炊かなくていいからいいんですけどね」

僕が作ったご飯が美味しいって褒めてくれたからって、絆されてはいけない。焦って言い返すと、クック…と意地悪い笑いがを聞こえてた。
「も、もう早く帰りましょうっ」
顔に朱が昇っていると感じたサトウは先に、と足を早めた。

夕日はとうに沈んでしまい、辺りはすっかり暗くなっていた。
先を行くサトウと、それに一歩ほど後ろで歩くKK。目指す場所は勿論自分たちの家だ。

と、

「あ、」
何かに気付いたように、サトウが声をあげた。
「どうした?」
「ほらKKさん、空見てください!」
サトウの声に促され、顔を上げてみる。と、そこには
「お、こいつは…」
「ね、すごいですよね~」
そこには思わず感嘆のため息が洩れる程の、満面の星々が夜空を飾っていた。
あまりの綺麗さについ足を止め、呆けるように眺めていた二人だったが、ふとサトウが一つのことを思い出す。
「そういえば今日って七夕ですよね~」
「ああ、そういやそんなイベントだったな」
「星がこんなに綺麗に見えるのもそのおかげかもしれませんね」
雨が降らなくて良かったなあ…、しみじみと呟くサトウ。

「…KKさんは七夕の二人のこと、知っていますよね?」
「おいおい、いくらオレでも知っているぞ。――織り姫と彦星のことだろ」
作品名:Kサト七夕小説 作家名:名瀬みなみ