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予言の書

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見つめられ、うっとりとした甘い声で囁かれればもう、なけなしの理性が吹き飛ばされる。エドワードは白旗を上げた。どーせ口では勝てるわけねえんだ。つうか勝っちまったほうが人として問題がある。けれど少しばかりはやり返さないと……。エドワードはロイの肩に手をまわしながらぼそっと呟くほどの小さな声を絞り出した。
「……アンタだってじーさんになっても男前」
耳や首まで赤く染まってしまった顔を見られないようにと背に手を伸ばしぎゅっときつく抱きついてはみたけれど、上がった体温は密着していれば誤魔化しようがない。けれど、離れる気にはならなくて、ああ、もう年寄りなんだから落ち着きとか慎みとか持てよオレと自分で自分に突っ込みも入れてみるけれど、そんなものは言い訳で。ただ、子供の時のようにしがみつく。告げられたほうの男は一瞬だけぽかんとして、ようやく意味が脳細胞まで到達したのか、窓の外の青空にも負けないくらいの晴れやかな笑顔を惜しみなく振り撒いて、腕の中の恋人をきつく強く抱きしめた。』

***

無言のまま、ロイはその差し出されたノートをぱらぱらとめくり続けた。
「す、すまねえ大佐……。これ、書いたのアルなんだけど……怒るよな?呆れるよな?」
「……アルフォンスはなかなかの想像力がある、な……」
ほぼ棒読み状態で、視線もノートに固定したまま。ロイはぼそりとそう言った。
「いや、なんか夜に読む本とか無くなっちまった時とかにコソコソなんか書いてるなって思ったんだけど……」
「うん?」
「これ……なんか出版社持ち込むとか言いだして……」
「ああ……」
「ふざけんなって怒鳴って破り捨てよーとかしたんだけど」
「で、破りはしなかったんだね?この現物がこの私の手元にあるということは」
「う、うん……。『僕が一生懸命書いたのにっ!』って逆ギレされちまって……。で、出版社とか持って行ったら絶交だって言ってやったんだけど、それでもアイツもまた更にキレちまってて……んとに怒り狂いたいのオレだってーのにさ」
「ま、まあアルフォンスがそこまで怒りを表明するということはよほど頑張って書いていたのだろうねえ……」
「……で、結局な。それ、大佐に読ませたらどこにも持ち込まないし、処分してもいいって、なんでか知らねえけどアルのやつ言いだして……」
「ああ……なるほどねえ……」
「だからアンタに見せたら燃やすからって。すまん大佐。そんなの気持ち悪い……だろ?」
自分たちが恋人同士になって、添い遂げようという長い時間共に居て、そして年老いても正直暑苦しいほどにいちゃつきまくっている小説だ。ロイは、眉間に皺を寄せた。エドワードはロイが不快になっていると思っているが実のところはそうではない。この本はアルフォンスからのある種のメッセージだと、ロイはそんなふうに受け取ったのだ。
「ご、ごめん……。でも出版社持ち込みだけは阻止したから。そんで許してくれってのはあれだけど。その……」
しどろもどろになってエドワードはあれこれと言い訳を重ねている。一方ロイはといえば、読み終えたそのノートを何故だが引き出しの中にしっかりと仕舞い、そうして重々しく腕を組むと徐に口を開いた。
「怒らんよ。だがね、鋼の。代わりにと言っては何だがね。……私の言うことを一つ聞いてくれないかね?」
「な、なに……?」
恐る恐る、エドワードはロイを見上げた。
「このね、アルフォンスの小説を現実のものにしたいのだが。鋼の、いやエドワード。もちろん承諾してくれるだろう?」
そうしてロイはこれ以上もないほどににっこりと微笑んだ。


そして物語の結末は。見事というべきかなんというべきか、アルフォンスの創作通りというわけで。
余談ではあるが大切に保管され続けたそのノートをロイはこっそりと『予言の書』と称し、時折読み返している…らしい。




‐終‐
作品名:予言の書 作家名:ノリヲ