ある日常の一コマ
ある日常の一コマ
頬をするりと撫でられて、はっとした。少しぼんやりしてしまって、ジュリオはあわててその手の持ち主であるジャンに振り向く。
「どした? ジュリオ、疲れたか?」
「あ、いえ…」
見るとジャンは少し心配そうな顔でこちらを見ていた。
もしかしたら、何度か呼んでくれていたのかもしれない。そう思うと、頬を撫でられるまで気付けなかった自分に自己嫌悪し小さくなる。
せっかくジャンさんが話しかけてくれたのに気付かないなんて、しかも心配を掛けさせてしまうなんて最低だ。
しかもジュリオはジャンを守る立場だ。それなのにそれを忘れて、例え僅かな間だとしてもぼーっとしてしまう等護衛失格だ。カポとなったジャンは一体いつ狙われるかもわからないと言うのに。
すみ…ません…、と消え入りそうな声でジュリオは呟く。
「ん?」
落ち込んだジュリオの横でジャンが首をかしげる。そして少し考えた後理由に思い至ったのか苦笑した。
「何謝ってんだよ」
やれやれと言った風にジャンはため息を吐き、ジュリオはびくりと大げさに肩を跳ねさせる。
また呆れさせてしまったのだと思ってよりいっそう自己嫌悪が募りジュリオは更に身体を小さく縮こませた。
「すみ、ません…すみません…」
「…おい、ジュリオ?」
「お、俺…ジャンさんを、無視、するなんて…。ごめ、ごめ…なさ…」
そう呟くたび自分の不甲斐無さを感じて目頭が熱くなる。そうしてどんどん自己嫌悪の深い闇の中へと潜って行きそうな思考を、頬がふいに引っ張られ、その痛みで戻された。
驚いてジャンを見ると、彼は笑っていた。ジュリオが口を開こうとすると、ジャンはもう片方の手もジュリオの頬を軽く摘む。そして外側に引っ張るようにして両手を動かした。
「じゃ、じゃんひゃ…」
「こーら、ジュリオ。なーに一人で暗くなってんだよ」
くすくすとジャンが笑いながら、以外と伸びるジュリオの頬を引っ張って遊ぶ。それに抵抗もできずにジュリオはただされるがままになり、「あ…う…」と言葉にならない声を漏らした。
そのたびにまたくすくすとジャンは笑う。しばらくそうしてジャンに遊ばれ、ようやく頬からジャンの指が外されると、そこは僅かにじんじんと痛みの伴った熱を帯びた。
そして軽いキスが一つ、頬に落とされる。
「あ、あの…ジャン、さん…!」
頬をするりと撫でられて、はっとした。少しぼんやりしてしまって、ジュリオはあわててその手の持ち主であるジャンに振り向く。
「どした? ジュリオ、疲れたか?」
「あ、いえ…」
見るとジャンは少し心配そうな顔でこちらを見ていた。
もしかしたら、何度か呼んでくれていたのかもしれない。そう思うと、頬を撫でられるまで気付けなかった自分に自己嫌悪し小さくなる。
せっかくジャンさんが話しかけてくれたのに気付かないなんて、しかも心配を掛けさせてしまうなんて最低だ。
しかもジュリオはジャンを守る立場だ。それなのにそれを忘れて、例え僅かな間だとしてもぼーっとしてしまう等護衛失格だ。カポとなったジャンは一体いつ狙われるかもわからないと言うのに。
すみ…ません…、と消え入りそうな声でジュリオは呟く。
「ん?」
落ち込んだジュリオの横でジャンが首をかしげる。そして少し考えた後理由に思い至ったのか苦笑した。
「何謝ってんだよ」
やれやれと言った風にジャンはため息を吐き、ジュリオはびくりと大げさに肩を跳ねさせる。
また呆れさせてしまったのだと思ってよりいっそう自己嫌悪が募りジュリオは更に身体を小さく縮こませた。
「すみ、ません…すみません…」
「…おい、ジュリオ?」
「お、俺…ジャンさんを、無視、するなんて…。ごめ、ごめ…なさ…」
そう呟くたび自分の不甲斐無さを感じて目頭が熱くなる。そうしてどんどん自己嫌悪の深い闇の中へと潜って行きそうな思考を、頬がふいに引っ張られ、その痛みで戻された。
驚いてジャンを見ると、彼は笑っていた。ジュリオが口を開こうとすると、ジャンはもう片方の手もジュリオの頬を軽く摘む。そして外側に引っ張るようにして両手を動かした。
「じゃ、じゃんひゃ…」
「こーら、ジュリオ。なーに一人で暗くなってんだよ」
くすくすとジャンが笑いながら、以外と伸びるジュリオの頬を引っ張って遊ぶ。それに抵抗もできずにジュリオはただされるがままになり、「あ…う…」と言葉にならない声を漏らした。
そのたびにまたくすくすとジャンは笑う。しばらくそうしてジャンに遊ばれ、ようやく頬からジャンの指が外されると、そこは僅かにじんじんと痛みの伴った熱を帯びた。
そして軽いキスが一つ、頬に落とされる。
「あ、あの…ジャン、さん…!」