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La notte precedente

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La notte precedente


書類の山も僅かになり、ジャンは疲れた目頭を軽く揉み、ふうとため息を吐いた。
…あともう一息だ。
ぐっ、と上に伸びて、小さく唸りながら硬くなった身体に血を巡らせ、机に向かおうとペンをとったとき、コンコンとドアをノックする遠慮がちな音が響いた。
そしてすぐさま声がする。

「ジャン、さん。俺です…」

あの声はジュリオだ。無意識に笑みを浮かべて、ジャンはとったペンをもう一度机の上へと置くと、入ってくるよう返事をする。
その返事後ゆっくりとドアが開けられ、ジュリオが姿を現した。

「お疲れ様です、ジャンさん」
「ああ、ジュリオもお疲れちゃん」

今日もデイバンの掃除をしてきたジュリオだが、それほど疲れの色は見えていなかった。流石だなと感心するが同時に不安もあった。
最近自分は一緒にいってやれない。
自分の仕事もそうだが、何よりCR:5のボスがそうホイホイとついていけるわけもないのだから仕方ない。だが、自分の知らない所でジュリオがまた変になってしまわないかという不安もあった。
ジュリオの事は信用しているし信頼している。けれどそれとこれとはまた別だった。いくら本人が大丈夫だと言っても心配なものは心配なのだ。
過保護なのか俺…とため息をつきたいのを我慢してジュリオを見ると、何か言いたそうにもじもじしていた。
そして目が合うと、意を決したようにジュリオの口が開く。

「あの…ジャン、さん…」
「お? どした?」
「…これ、どうぞ…」

ジュリオが後ろ手に隠していた物をおずおずと突き出してくる。ラッピングされた箱のようだ。

「ん…? なんだ、これ」

それを受け取ってまじまじと見るが、何なのかがわからない。ひっくり返してみるが同じ事だった。暫く頭上に?を浮かべるジャンに、ジュリオはすぐに答えを教えた。

「チョコレート、です…今日、バレンタイン、なので…」
「バレンタイン? …ああ!! そういやそうだった…。すっかり忘れてたぜ…」

頭の中で日付を思い浮かべてようやっと気付いた。最近忙しかったのでトンと忘れていた。それよりもその次の日の方がジャンには大切だったのだ。
その日はなんとしても休みが欲しかったため、最近無理をしすぎていた。
作品名:La notte precedente 作家名:みみや