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La notte precedente

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ここ暫くはジュリオと住んでいる部屋には帰らず、自分用の部屋で寝泊りしていたのもそのためだが、その事はジュリオには内緒だ。

「グラッツェ、ジュリオ。けど悪ぃ…俺なんも用意してねぇや…」
「あ、いえ、そんな…! 俺は、ジャン、さんに受け取ってもらえただけで、嬉しい…です」

そう言って頬を染めるジュリオは本当に嬉しそうで、ジャンまでつられて笑ってしまう。

「…そっか。なあジュリオ、あけてもいいか?」
「あ、はい。どうぞ」

もっとジュリオのそんな顔を見たくてジャンは聞いた。きっとジャンが食べるのを嬉しそうに見るのだろうと思うと思わず口角が上がってしまう。
そんな想像をしながら丁寧に包装をはがしていくと現れたのは予想していた、いかにも高級そうな箱のチョコレート。
ワオ、流石ボンドーネ家の総帥。このチョコレートもきっとジャンには想像もつかないような値段がするのだろう。
きっと味も金の有難みが身に沁みそうなほど甘くてほろ苦くて美味いに違いない。
ぺりぺりと薄いビニールシートをはがして蓋をあければ、四角いマス目に一つ一つ宝石のような形をしたチョコレートが収められていた。
目に留まった一つを指先でひょいと摘んで口に頬張ると、想像していた味とは比べ物にならないほどのほろ苦さと甘い味がふんわりと口内に広がってジャンは感嘆の声を漏らした。

「……お、美味ぇ! 流石ジュリオだな」
「気にいってもらえて、よかった…」

ジャンに気に入ってもらえて心底安堵したようなジュリオが嬉しそうに微笑む。
ジャンはその甘さについついもう一個チョコレートに手を伸ばした。頭の中で、疲れた時には甘いものと言うから別にいいだろう?と誰に言い訳するでもなく思いながら、それを口の中へと収めてしまう。

「あー…、まじ美味い…」

しみじみと呟いた。仕事の疲れがとれるようだ。もう一仕事頑張るか!という気になってしまう。そんなジャンを見てジュリオはふふっと笑った。

「…あ、ジャンさん…唇に、チョコが…」
「…んー?」

そう指摘されたが、自分で拭うよりはやく、ジュリオが近づいてくる。顔が間近にあって、あっ、と思った時にはぺろりと唇を舐められていた。

「…あ、ちょ…!」
作品名:La notte precedente 作家名:みみや