唇に毒ある蜜を
「俺、やっぱりこの世界の中で、シズちゃんだけが格別に、嫌いだよ」
そう告げてから、ナイフを構える。その言葉を聞いた途端に、喧嘩人形がちょっと複雑そうな顔をした。
――こんな俺からでも、はっきりと嫌われれば多少傷ついたりするわけ?
いつか聞いてみたいが、そんな日はしばらくは来そうにない。なぜなら、臨也はこんな言葉しか告げられないからだ。
「本当に、――大嫌い」
もう一度、しっかりはっきりとそんな言葉を口にする。仕方ないのだ。優秀な秘書の言によれば、臨也はひねくれているらしいので。
(唇に毒ある蜜を・おわり)