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みそさざい
みそさざい
novelistID. 10303
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興味という計算外な感情

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池袋の街並みに佇む黒衣の青年―折原臨也は行き交う雑踏を見ながらただ何か企むように笑みを零した。雑踏の向こう側には池袋最強と謳われる平和島静雄の姿がある。臨也のことを察知しているのかいないのか、静雄はやけに機嫌が悪そうだ。しかし臨也の目的はその宿敵とも言える平和島静雄ではなく、その最強の手綱を握っている傍らの男にあった。
田中トム。ドレットの髪を除けば見るからに平平凡凡としたその様相に臨也は強く興味を惹かれた。興味といっても恋愛云々としての興味ではなく、平和島静雄というとてつもないじゃじゃ馬をよくも人間として扱い、コントロールしている点においてに興味を惹かれたのだ。
静雄を身も心も「化け物」にしてしまいたかった臨也としては好意というより寧ろ、憎悪に近い感情で興味を持った。そんな相手は折原臨也という人間からすればなかなかあることではない。普段人間という種別のいきものを愛していると豪語する臨也にとって、人間に対する憎悪とは自分の中では有り得ないことであると思っていたし、どんな行動でも愛せる自信があったからこそ、田中トムという人間に向ける特異な感情に臨也は強く興味を注いだ。

(といっても…シズちゃんがいるとなかなかコンタクトとれないんだよねぇ…)

ここ数日、根城にしている新宿から池袋に甲斐甲斐しくも通って田中トムと接触を試みたが、なんとも憎らしいことに静雄がトムから片時も離れることはなかった。仕事ならば仕方ないと自宅を張ってみるも、なにやらここ数日は毎日静雄が宿泊している。その意味を深く追求すればきっと静雄にとって大ダメージになるのだが、接触したいのはあくまで田中トムである臨也はトムの部屋に静雄の気配がするとその度に諦めて帰るのであった。情報屋、折原臨也。案外間の抜けた男である。
しかし好機はほどなくして訪れた。それは金曜の夜、トムを見張るでもなく臨也が池袋をぶらついていた時だ。久しぶりに露西亜寿司にでも行こうかと、眠ることを知らない街を歩いているとコンビニから出てくるトムを見かけた。臨也は辺りを見渡す。ゴミ箱の傍らに設置してある灰皿で一服するトムの近くに静雄の気配はない。きっと仕事を終えて静雄も帰ったのだろう。今しかない。臨也は露西亜寿司に行くことを諦め、トムの方へ近づいた。

「田中トムさん」
「あん?お前…誰だっけ?」
「会うのは初めてだよね。俺は折原臨也、まぁシズちゃんの友達…ってところかな」
「友達ぃ?」

トムの表情は得も言われぬものであった。静雄の友人といったものに遭遇することが極めて稀であるのだからそれも仕方のないことなのであろうが、その表情は臨也にとって苛立ちを覚えるもので、見込み違いだったのだろうか、と臨也は心中でトムを蔑みながら早々に話を切り上げようとため息をつく。全くもって予想外というか、期待はずれな反応に臨也は臆面もなく小馬鹿にした笑みを浮かべた。とはいえ静雄と共にいるのだから多少なり何かを期待していたのかも知れない、その考えが常識を逸脱していたのであってきっとこの男は何も悪くは無いのだ。人間を憐れむことができるのも自分の愛の形なのだ。と自身に陶酔し始めた臨也は、その憐れんでいたはずのトムの一言で我に返ることとなった。

「お前あれだろ、静雄の機嫌が悪ぃ原因だろ」