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銀河

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ひとつ、馬鹿みたいな兄弟のおはなし。


 僕の兄弟はとても煩いやつで、本当に煩いやつで、いつでも浮き足たって、何がうれしいのかさっぱりわからないけれどいつもニコニコと自分の言いたいことを好き勝手に言って、時々人を困らせたり無茶なことを言って呆れさせたり、本当に馬鹿みたいに元気だった。実際、風邪なんて引いたことないって言うし、馬鹿なのかもしれない。
 そんな馬鹿な彼が唯一僕の前だけでは泣いた。彼は早く大人になりすぎた子供みたいに、泣き方をよく知らないみたいで、本当に下手糞に泣く。知っているかい、アメリカ、小さい頃に泣かなかった子供はね、泣き方を知らないから、大人になったとき泣けないか、泣くのが下手糞になるかのどちらかなんだよ。人間の場合だけど。こんなところは似るなんてとっても素敵だと思わない、なんて彼の背中に聞くと、彼は「おもわない」、って震える声でそういったようだった。鼻声でよくわからなかった。
 僕はぐしゃぐしゃにされているクッションのカバーをあとでかえないとなあ、と思いながら、キッチンへ行ってミルクを温める。彼はコーラとかコーヒーとかの方が好きだと思うけれど、こういうときはココアを飲むのが一番いいと僕は思っている。ここは僕の家だから、彼がいくら嫌であろうと、ここのルールには従ってもらわないといけない。と思いつつ強く出れない僕は、飲んでくれるかなあなんて、余計な心配をしてためいきなんてついた。
 出来上がったココアを持っていくと、アメリカはぐしょぐしょになったクッションが気持ち悪くなったらしく、それを足元へ転がして、新しいクッションをまたぬらしていた。うん、そのクッションのカバーなんだけどね、先週新しく変えたばかりでね、なんて言葉も彼には通じない。僕はあきらめる。そういう役柄だ、仕方がない、受け入れようじゃないか。
 僕は、こういう感情の爆発というか、どうにもならなくなった苦しみだとか、そういうのを泣いて吐き出す彼が少しだけうらやましい。そういうのは、疲れてしまうからね、僕はあまりやらない。何度も何度も、同じようにしていたら、いつか麻痺してしまいそうで怖かったのが本当。僕は、そういうことがあるたびに、うんそうだね、つらいよねって、あるかどうかわからないこころの片隅に、静かにしていてねってやさしく置いておく。気がついたら消えているんだ。表になんて出てこない。
作品名:銀河 作家名:みかげ