ある朝の出来事
「そうですねえ。昨日はそのまま寝ちゃいましたし、ね」
含みのある言い方をされ、昨日の痴態を思いだして明日叶はぶわっと顔を赤くする。
「ねえ明日叶。折角だから一緒に浴びましょうか」
そんな明日叶を楽しそうに見ながら、眞鳥は冗談とも本気ともつかない声音で言葉を発した。
「なっ、何言って・・・!」
「いいじゃないですかあ。一緒にシャワー浴びるより、もっと恥ずかしい事してるでしょ?」
ね?と更に念押しされるが、はいそうですか。じゃあ一緒に入りましょう。なんて明日叶には言える筈がない。眞鳥と一緒に入ったら、遅刻所ではすまなくなりそうなのは目に見えている。
「お、俺! 一人で入りますからっ」
すくっと立ち上がると、眞鳥の返事も聞かずに明日叶はバスルームへと駆け込む。
そんな明日叶を、眞鳥はぽかんと見送り、ばたんと扉が閉まった音で我にかえった。
「・・・あーらら、逃げられちゃいましたねえ」
特に残念そうに感じられない声音でくすくすと楽しそうに笑いながら眞鳥は呟く。
「本当、明日叶といると退屈しませんね」
眞鳥はふふふっと幸せそうに笑いながら、やがて聞こえてくるシャワーの水音と明日叶の立てる音に耳を傾けて、ゆっくりと目を閉じた。