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ゆめのおわり

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1.

振り下ろされたハンマーが空を切った。
それを悔しがるどころか、その怪人はより愉しげに口元をめくりあげ、叫んだ。
「あーおばぁああああ!!!」

いつもどおり、帝人は青葉らブルースクウェアの面々と池袋の町を見回っていたところだった。
最近の池袋は変だった。
見たこともないグループが街を我が物顔で徘徊し、やはり帝人が知らない間に増えたダラーズメンバーがダラーズの掲示板に連日物騒な書き込みを行い、
それに同調した、今まで比較的大人しかったメンバーが悪事に手を染めたり、そんなダラーズを見限った、まともなメンバーがどんどん抜けていったりと。
帝人がどんなにダラーズを綺麗にしようと思っても、もはや、ダラーズは、池袋の町は、帝人の手に負えない状態になっていっていた。

そんな折だった。
裏路地に差し掛かった帝人たちに、巨大なハンマーを持った男が襲い掛かってきたのは。
その男は、醜い火傷痕のある顔に、鬼気迫る笑みを浮かべ、狂ったように笑いながら、
手近にいたブルースクウェアのメンバー数人をハンマーでなぎ払った。
ハンマーが直撃し、壁に叩きつけられた少年が、うめきながら地面に転がり、動かなくなる。
「ギン!!!」
血相を変えてその少年の名を呼ぶ青葉。
助け出そうとブルースクウェアのメンバーが動きかけるが、そこに新たに、チンピラ風の男たちが
火傷の男の背後から現れ、牽制するようにナイフを抜いた。
息を呑み、こちらも思い思いの武器を構えるブルースクウェアのメンバーたち。
火傷の男の異常性もさることながら、人数的にも帝人側は劣勢だった。
男の発する雰囲気に飲まれるようにして、ただ対峙したまま動けないでいるブルースクウェアのメンバーたちを前に、男はもう一度叫んだ。
「久しぶりだなぁああ、青葉よぉおおお!」
その叫び声に、青葉が男を睨みつける。
「おまえは…」
「おいおい、お前にはめられて入ったムショからようやく出られたおにいちゃんに挨拶もなしかぁあああ?」
兄!?
その言葉に帝人は目を見開く。
では、この男が、青葉の兄でもある、前ブルースクウェアのリーダー、泉井蘭か。
「久しぶりに兄弟仲良くしようぜぇえええ、そんで死ね!!!!」
舌なめずりするように告げ、青葉の元へと迫ってくる蘭を、我に帰ったブルースクウェアのメンバーが阻もうとする。
少年たちに必死の抵抗をものともせず、手に持ったハンマーで蹴散らして行く蘭。
蘭のハンマーが届かなかった少年たちも、チンピラ風の男たちとの防戦に手一杯で、青葉のカバーに回れない。
とうとう眼前に迫った蘭のハンマーを青葉は数振り避け、手に持った鉄パイプで防戦しようとするが、
やがてもろとも殴り飛ばされる。
壁に叩きつけられ、うずくまる青葉。
「じゃあなあ青葉ぁああ。天国で楽しくやってろよ!!!」
動けないでいる青葉の頭部に容赦なくハンマーが振り下ろされようとして、帝人はとっさに
「やめろ!!」と叫んで、足元に落ちていったガラス瓶を投げつけた。
帝人の投擲能力では威嚇程度になればいい方だと思っていたが、幸か不幸か、蘭の頭に直撃する。
一瞬その体が大きく揺れ、おかしな方向に折れ曲がる。
だが、倒れず、不気味なくらいにゆっくりとその体制を立て直すと、蘭の気が違ったような瞳がこちらを見た。
「なんだぁ、お前はあああ!??」
頭から血を流しながら、相変わらずの箍が外れたような口調で叫び、
こちらへと凄まじい勢いで迫ってくる蘭に、帝人は必死にそのハンマーを避けようとするが、
一閃目も完璧に避けられず、払い飛ばされる。
2mほど吹き飛ばされ、地面に転がる帝人。
体全体が痛くて、うまく起き上がれない。
壁に叩きつけられることは免れたが、末路は同じようだった。
執拗に振り下ろされようとするハンマーを、霞む視界の中で為す術もなく見つめていると、

「やめなさい!!」

突如、苛烈な声と共に、鋭い閃光が走った。
「うぉぉおおお!????」
初めて蘭の動揺した声が聞こえ、次の瞬間、蘭のハンマーが真っ二つに分断される。
ハンマー頭部の大部分が、重い音を立てて地面に落ちる。
怯んだ蘭に、銀色に光る刃で追い討ちを掛ける制服姿の少女。
あれ、は…
大切な少女とよく似たその姿に、そんなはずは、と目を疑う。
蘭は、残った獲物と、新たに取り出したナイフで、少女に防戦しようとしているが、
素早く、力強い少女の猛攻に明らかに押されている。
「く、くそ、こいつだけでも…っ!!!」
そんな蘭の劣勢を見て取った蘭の手下と思しき男の一人が、帝人に襲い掛かろうとする。
防戦しようと身を起こしかけるが、左腕にはしった激しい痛みで反応が遅れる。
…やられるっ!
振り下ろされる鉄パイプをただ待ち受けていると、
「…がっ!!?」
唐突に目の前の男が横に吹っ飛んだ。
驚きに目を見開く帝人。
「帝人、無事か!?」
男を木刀のようなもので殴り飛ばし、切羽詰った口調で問いかけてきたのは---

「……まさ、おみ。」

ひどく懐かしい、金髪頭の幼馴染が、そこにいた。
「帝人、もう少し我慢しろ!杏里と俺たちでこいつらを追い払うから!」
その言葉に、もう一度、蘭と日本刀のような刃で渡り合っている少女の姿を見る。
紛れもなくその姿は、帝人のもう一人の大切な人で。
獲物をまともに使えなくなった蘭に対して、杏里は完全に優勢で、
他の蘭の手下たちも、正臣と、正臣の他の黄巾族のメンバーと思しき少年たちが蹴散らしていっていた。
この様子では、まもなく決着は着くだろう。
情けないが、負傷した自分に手助けできることはないと判断し、少し先に倒れていた青葉の様子を見る。
頭から出血をしているため絶対とは言えないが、息もしているし、とりあえず命に別状はなさそうだ。
ほっと息をつき、改めて戦いの様子を見ると、蘭以外、敵で立っているものがほとんどおらず、
蘭もものすごい形相で捨て台詞を吐いて、撤退しようとしていた。
蘭たちが完全に去った後、正臣と杏里が気遣わしげな表情でこちらに駆け寄って来る。
よかっ、た…
正臣が何か叫んでいるのが聞こえたが、緊張の糸が切れ、同時に激しく痛み出した左腕の感覚に、
帝人の意識はそこで途切れた。


作品名:ゆめのおわり 作家名:てん